タイムカードは18時47分なのに、残業は18時45分までしか付かない。毎日の10分15分が、勝手に消えている。これは普通のことなのか。

即答する。違法だ。労働時間の計算は1分単位が原則で、日々の切り捨ては賃金の未払いになる。どこまでが合法の丸めで、どこからが違法か。消えた分の計算と取り返し方まで書く。

この記事の要点

  • 日々の残業を15分・30分単位で切り捨てるのは違法だ
  • 合法なのは、月の合計に対する30分ルールの丸めだけだ
  • 毎日15分の切り捨ては、月5時間前後のタダ働きに相当する
  • 過去の切り捨て分は、当面3年さかのぼって請求できる

原則は1分単位。根拠から押さえる

労働時間の扱いの原則はシンプルで、働いた時間は1分単位で全部賃金の対象になる。根拠は労働基準法24条の賃金全額払いの原則だ。18時47分まで働いたなら、18時45分まででなく47分までの賃金が発生している。

日々の端数を15分単位・30分単位で切り捨てる運用は、切り捨てた時間分の賃金を払わないという意味になり、この原則に反する。「うちは昔から15分単位だから」という説明は、違法な運用が長く続いているという告白でしかない。

例外は1つだけ。月の合計への30分ルール

ここで混乱しやすいのが、合法とされる丸めが1つだけ存在することだ。行政通達で認められているのは、こういう処理になる。

  • 1ヶ月分の残業時間を合計した後、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げる

ポイントは「合計した後」だ。日ごとの切り捨ては不可、月の合計への丸めのみ可。しかも切り捨てだけでなく切り上げとセットになっているから、労働者が一方的に損をしない形に限られている。

処理合法性
毎日の残業を15分単位で切り捨て違法
毎日の残業を30分単位で切り捨て違法
月の合計残業の30分未満を切り捨て・30分以上を切り上げ合法
月の合計から一律で数時間分を控除違法

自分の会社の給与計算がどちら側か、明細と勤怠の突き合わせで見えてくる。

消えている金額を計算してみる

毎日15分切り捨てられている人の損失を、ざっくり計算するとこうなる。

月20日勤務×15分=月5時間。残業単価が時給換算2,000円弱の人なら、月1万円前後、年12万円前後が消えている計算になる。毎日30分近く切られている人は、この倍だ。

正確な残業単価の出し方(基礎賃金÷月平均所定労働時間×割増率)は残業代の計算方法で書いた通りで、自分の単価を出してから掛け算すれば、請求額の目安が出る。端数と呼ぶには大きすぎる金額だと分かるはずだ。

取り返す手順。証拠→社内確認→労基署

手順1、実労働時間の証拠を集める。タイムカードや打刻画面のスクリーンショット、PCのログオフ時刻、業務メールの送信時刻。切り捨て前の時刻が分かる記録が本体だ。給与明細と並べれば、切り捨ての事実がそのまま証明になる。

手順2、社内に確認する。「勤怠の端数処理はどういう規定になっていますか」と人事へメールで聞く。会社側がミスと認めて是正されるならそれで解決だし、「15分単位です」と明言されたら、その返信自体が証拠になる。

手順3、労働基準監督署に相談する。未払い賃金の類型として扱われ、相談は無料だ。是正勧告が出れば、過去分の支払いを含めて動く会社が大半になる。残業代がそもそも出ていない場合の請求の全体像は残業代が出ないのは違法だ、給料自体が遅れている場合は給料が振り込まれない時の対処がそれぞれ担当だ。

請求権は当面3年ある。退職後でも請求できるから、辞めるつもりの人はむしろ、在職中に証拠だけ揃えて退職後に請求する形も取れる。

よくある質問

始業前の朝礼や着替えの時間も労働時間になりますか?

参加が義務づけられた朝礼や、制服への着替えが義務の場合の着替え時間は、労働時間に当たるとされた裁判例がある。拘束されている時間は原則、賃金の対象という理屈だ。

15分単位の会社は多いと聞きます。本当にどこも違法なのですか?

日々の切り捨てをしている限り違法だ。広く行われていることと合法であることは別の話で、運用の古い会社ほどこの区別がついていない。

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