「公務員なんてもったいない」。辞めたいと口にした瞬間、必ず返ってくる言葉だ。言っているのはたいてい、公務員をやったことがない人だ。
この言葉を分解する。中身は3つに分かれていて、そのうち1つはあなたに関係がない。
先に一文で。公務員を辞めるのがもったいないと言われる中身は安定・年金退職金・世間体の3つで、検討すべきは前の2つだけ、それと引き換えに何を得るかがはっきりしているなら不合理な選択ではない。
この記事の要点
- 「もったいない」の中身は3つ。世間体は判断材料にしない
- 実際に失うのは、解雇されにくさと手厚い制度
- 失わないのは、調整力と制度を扱った経験
- 辞めて後悔するのは、辞めたい理由が言語化できていない場合
「もったいない」の3つの中身
1、雇用の安定
これは事実として強い。民間より解雇されにくく、景気で職を失うことも基本的にない。ここを軽く見ると、あとで響く部分だ。
2、年金と退職金
かつてほどの差はなくなったが、依然として手厚い部類にはある。勤続年数で増える仕組みなので、辞める時期によって失う額は変わる。
3、世間体
親が喜ぶ、周囲に説明しやすい。これはあなたの人生の判断材料にする必要がない。他人の安心のために自分の時間を使う理由はない。
つまり実質的に検討するのは1と2だけになる。
実際に失うもの/失わないもの
失うもの
- 解雇されにくさ
- 手厚い休暇制度と福利厚生
- 年功で読める昇給のカーブ
失わないもの
- 制度や法令を読み解く力
- 利害の違う相手を調整してきた経験
- 正確さを要求される事務を回してきた実績
- 資格や学歴(当然だが、これは残る)
辞めても消えないものは意外と多い。失うのは主に「会社側の待遇」であって、あなたの能力ではない。
後悔する人としない人
私のところに届く相談を見ていると、分かれ目ははっきりしている。
後悔する人
- 辞めたい理由が「なんとなく合わない」のまま動いた
- 民間の忙しさと成果主義を想像していなかった
- 収入が一時的に下がることを計算に入れていなかった
後悔しない人
- 辞めたい理由が具体的(異動が読めない、年功で評価されない、住民対応が消耗する)
- 次にやりたいことの方向が決まっている
- 一時的に年収が下がることを織り込んでいる
要するに、理由が言語化できているかどうかだ。ここが曖昧なまま動くと、安定だけ失って何も得られない。軸の出し方は転職の軸の決め方の記事で書いた。
私自身、4社目を選ぶ時に年収を下げている。それができたのは、下げてでも取りたいものが決まっていたからだ。決まっていなければ、ただの損だった。
民間で評価される形に翻訳する
公務員の職務経歴書でよくある失敗は、制度名と部署名をそのまま並べることだ。民間の採用担当には規模も難易度も伝わらない。
翻訳するのは3点。
- 扱った規模|予算額、対象人数、関わった事業者数
- 調整した相手|庁内、議会、住民、事業者。種類と数を書く
- 改善した実績|処理時間の短縮、申請件数の増加、手順の見直し
特に2は、民間で希少価値が高い。利害の異なる複数の相手をまとめて合意を作った経験は、社内調整が多い企業ほど評価される。
周りの反対をどう扱うか
親や配偶者に反対されることは多い。相手が心配しているのは、あなたの将来でなく自分の不安であることも実際にある。
伝え方の順番はこうだ。
- 辞めたい理由を具体で言う(不満でなく、事実で)
- 次の見通しを言う(決まっていなくても、動き方は言える)
- お金の話をする(貯金、生活費、収入が下がる期間の想定)
3が一番効く。反対の多くは、経済的な不安から来ている。反対された時の対応は親が転職に口を出してくる時の記事で書いた。
よくある誤解
「公務員は民間で通用しない」。通用する。通用しにくいのは、経験を翻訳せずに出した場合だ。
「辞めるなら若いうちしかない」。年齢が上がるほど選択肢は狭まるが、制度や許認可の知識が武器になる業界(不動産、医療、福祉、インフラ、コンサル)は年齢と経験を評価する。
よくある質問
次を決めずに辞めてもいいですか?
勧めない。在職中の活動は精神的に楽で、条件も強く出せる。どうしても続けられない状態なら別だが、その場合も休職を先に検討するほうが選択肢は残る(次が決まっていないまま辞めたい時の記事)。
民間に移ると年収は下がりますか?
短期的には下がることが多い。ただし民間は成果と役割で上がる幅が大きいので、数年での回復は珍しくない。判断するなら、初年度でなく3年後の見込みで比べたほうがいい。
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