内定をもらい、承諾し、前職に退職を伝えた。入社の2週間前に、「採用計画の見直しで内定を取り消す」と連絡が来た。前職はもう戻れない。これは許されるのか。
先に言う。内定取り消しは、解雇と同じ扱いだ。会社が自由にできるものではない。認められる理由、認められない理由、補償の請求、前職を辞めた後だった時の動き方を書く。
先に一文で。中途採用の内定取り消しは解雇と同じ基準で判断され、経歴詐称・就業不能・整理解雇の要件を満たす経営悪化など客観的に合理的な理由がなければ無効で、「採用計画の変更」や「印象の変化」での取り消しは違法なので、通知と承諾の記録を保存して賃金か損害賠償を請求し、労働局か弁護士に相談するのが正解だ。
この記事の要点
- 内定は労働契約の成立。取り消しは解雇と同じ基準で判断される
- 認められるのは、経歴詐称・就業不能・整理解雇の要件を満たす経営悪化など
- 採用計画の変更、印象が変わった、他の候補者が良い、は違法と判断されやすい
- 前職を辞めた後なら、賃金か損害賠償を請求できる。記録を保存する
法律の整理。内定は契約の成立
内定通知を受けて承諾した時点で、始期付解約権留保付労働契約が成立する。入社日が来れば働き始める契約で、会社は一定の場合に解約する権利を留保している、という意味だ。
この留保された解約権の行使が内定取り消しで、最高裁の判例により、解雇と同じく客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要とされている。会社が自由に取り消せるものではない。
認められる理由と、認められない理由
| 認められ得る理由 | 認められにくい理由 |
|---|---|
| 経歴詐称(学歴・職歴・資格の虚偽) | 採用計画の変更、人員の見直し |
| 健康診断で、業務に就けないことが判明 | 面接の印象と違った、印象が変わった |
| 会社の経営悪化で、整理解雇の4要件(人員削減の必要性・回避努力・人選の合理性・手続きの妥当性)を満たす | 他の候補者のほうが良かった |
| 内定後の重大な非行(犯罪など) | 前職の評判を聞いた(リファレンスの結果が主観的) |
| 提出書類の不備を期限内に解消しない | SNSの投稿が気に入らない(内容が業務に関係ない場合) |
右側の理由で取り消された場合、取り消しは無効で、あなたはその会社の従業員の地位にあることになる。入社予定日以降の賃金を請求できる。
前職を辞めた後だった時。補償の請求
最も損失が大きいのがこの場合だ。動き方は4つ。
- 取り消しの理由を書面で求める。口頭の説明だけでは争えない。「内定取り消しの理由を書面でください」とメールで送る
- 記録を保存する。内定通知、承諾書、労働条件通知書、入社日のやり取り、退職を伝えた時期が分かるもの
- 請求する内容を決める。取り消しが無効なら、入社予定日以降の賃金(働けなかった期間分)。有効でも信義に反する経過なら、損害賠償(前職の賃金相当額・転職活動の費用・慰謝料)
- 相談先へ。都道府県労働局の総合労働相談コーナー(あっせんが使える)、労働問題に強い弁護士、労働組合(ユニオン)。労基署は解雇の有効性を判断する機関ではないが、相談の窓口にはなる
会社側が補償金を提示して和解を持ちかけることも多い。金額は、入社予定日から次の就職までの期間の賃金相当が一つの目安になる。相談の流れは労働基準監督署に相談するとどうなるかにも書いた。
失業保険の扱い
内定取り消しで無職になった場合、前職の離職理由は自己都合でも、内定取り消しを理由に特定理由離職者として扱われることがある。ハローワークで事情を説明し、内定通知と取り消しの書面を出す。給付制限がつかない扱いになれば、生活の立て直しが早まる。会社都合と自己都合の違いは別記事へ。
取り消しのリスクを減らす動き方
| やること | 理由 |
|---|---|
| 労働条件通知書か採用通知を書面でもらう | 口頭の内定だけでは、契約の成立を証明しにくい |
| 承諾の前に、前職に退職を伝えない | 順番を守れば、取り消されても戻れる。内定承諾と退職交渉の順番へ |
| 入社日までの連絡を記録に残す | 会社側の態度の変化が分かる |
| 入社前の健康診断・書類提出は期限内に | 不備を理由にされない |
書面のもらい方は労働条件通知書はいつもらえるかに書いた。
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よくある質問
内定承諾書を出す前に取り消されました。補償は求められますか?
承諾前は契約が成立していないので、賃金の請求は難しい。ただし内定通知を信じて前職を辞めた、転居したなどの事情があれば、信義則違反として損害賠償を請求できる場合がある。
取り消しの理由が「経営悪化」です。仕方ないですか?
経営悪化だけでは足りない。整理解雇の4要件(必要性・回避努力・人選・手続き)を満たす必要がある。内定者だけを切って既存社員は残す、という人選は合理性を問われる。理由を書面で求め、相談する。
試用期間中の本採用拒否と、内定取り消しは同じですか?
似ているが、試用期間中はすでに働いているので、本採用拒否は解雇そのものとして扱われる。内定取り消しは入社前の解約権の行使で、判断の基準は解雇に準じる。どちらも会社が自由にはできない。
内定取り消しの対応シートをLINEで無料配布中
理由を書面で求める文面、保存する記録の一覧、相談先の比較(労働局・弁護士・ユニオン)、失業保険の手続きを公式LINEで無料配布している。内定取り消しは解雇と同じだ。自由にはできない。


