最後の給料明細を見て、控除欄で目が止まった。健康保険と厚生年金が、いつもの2倍。辞める人間から搾り取る気か。

違う。それは前月分と当月分の2ヶ月分まとめ引きで、違法でも損でもない。仕組みを分解する。

先に一文で。最後の給料の保険料2倍は、前月分を当月給与から引く運用の会社で月末退職した時に2ヶ月分がまとまるためで、負担総額は変わらない。

この記事の要点

  • 保険料は前月分を当月給与から引く運用が一般的だ
  • 月末退職は退職月分も発生し、引く先がないため2ヶ月分まとまる
  • 負担の総月数は変わっていない。損はしていない
  • 2倍ぴったりでない・3ヶ月分見える場合だけ、経理に確認する

仕組み。保険料の1ヶ月遅れ天引き

社会保険料(健康保険・厚生年金)の天引きは、前月分を当月の給料から引く運用が一般的だ。4月分の保険料は5月の給料から引かれている。普段は意識しないが、あなたの天引きは常に1ヶ月遅れで走っている。

ここに月末退職が重なるとこうなる。

  • 社会保険の資格は月末在籍なら、その月の分まで発生する
  • 3月31日退職なら、2月分(通常の遅れ分)+3月分(退職月分)の保険料が未精算
  • でも4月の給料は存在しない

だから最後の給料から2ヶ月分をまとめて引く。これが2倍の正体だ。取られすぎではなく、精算の前倒しにすぎない。負担する月数の合計は、辞めなかった場合と同じになる。

明細での確認方法

確認は2分でできる。

  1. 最後の明細の健康保険料・厚生年金保険料の額を見る
  2. 前月の明細の同じ欄と比べる
  3. ちょうど2倍前後なら、この2ヶ月分運用で説明がつく

2倍とずれる場合は、標準報酬月額の改定が挟まったか、別の要因だ。最後の給料は保険料以外にも減る要素が多く(日割り・住民税一括・手当停止)、全体の読み方は最後の給料が少ない理由で5つに分解した。住民税の一括徴収が重なると、体感の減りはさらに大きくなる(住民税の仕組みも併せて読むと全体がつながる)。

月末退職と月末前日退職。日付で変わる話

検索でよく出る「30日退職なら保険料が1ヶ月お得」の正確な中身も書いておく。

月末前日(例、3月30日)退職の場合。3月は月末に在籍していないので、会社の社会保険の資格は2月分まで。最後の給料から引かれるのは1ヶ月分で済む。

ただしこれは得ではなく、支払い先の変更だ。3月分の保険を空白にはできないので、国民健康保険+国民年金に自分で加入して払う。保険料は自治体と所得で変わるが、負担が消えるわけではない。しかも厚生年金(会社と折半・将来の年金に厚い)から国民年金に変わる分、中身は薄くなる。

結論は単純で、次の会社にすぐ入るなら月末退職で問題ない。翌月1日入社なら保険は切れ目なく新しい会社に引き継がれ、日付の小細工より綺麗に収まる。空白期間ができる退職の場合だけ、国保・国民年金の手続きと保険料を織り込んでおく。

本当の異常の見分け

まとめ引きは正常だが、こういう場合は経理に確認していい。

  • 3ヶ月分以上引かれているように見える(過去の未精算があった場合などは説明を求める)
  • 月末前日退職なのに2ヶ月分引かれている(資格喪失日の処理ミスの可能性)
  • 賞与からも保険料が引かれた上で、給料でも重複して見える(賞与の保険料は別枠で正常だが、内訳の説明は求められる)

確認は「最後の給与の保険料の内訳を教えてください」の一本で足りる。明細の他の項目の読み方は給料明細の見方が担当だ。

よくある誤解

「退職者から多く取るのは、会社の嫌がらせだ」。会社はルール上の精算をしているだけで、多く引いた分は保険者(協会けんぽ・年金機構など)に納められる。会社の懐には入らない。嫌がらせの余地がそもそもない仕組みだ。

「2ヶ月分引かれた分、失業中の保険料は払わなくていい」。引かれたのは在職中の月の分で、退職後の分は含まれない。退職翌月からは国保・国民年金(または任意継続・扶養)の保険料が別途始まる。ここを混同すると、退職後の家計が狂う。

よくある質問

任意継続と国民健康保険、どちらが安いですか?

前年所得と扶養の有無で逆転するため、一概に言えない。任意継続は在職時の保険料の全額負担(会社負担分も自分持ち)で上限あり、国保は前年所得ベースだ。退職前に、会社の健保と市区町村の両方に見積もりを聞いて比べるのが確実で、この比較は30分の手間で数万円の差になることがある。

最後の給料がマイナスになることはありますか?

日割りで支給が少ない月に2ヶ月分の保険料と住民税の一括徴収が重なると、理論上は振込額がほぼゼロやマイナス(不足分の請求)になることもある。有給消化で最終月の支給を確保しておくと、この事故は避けやすい。

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