上司から「そろそろ管理職に」という打診の気配がある。周りは出世競争に励んでいる。でも自分は、正直まったく昇進したくない。責任も部下の管理も増える割に、給料は大して変わらない。現場の仕事の方が好きだ。

そう思いつつ、「出世したくないなんて、社会人として終わってるのか?」と、どこかで自分を疑っていないか。

答えを言う。出世したくないは、甘えでも逃げでもない。数字と実態を見れば、十分に合理的な選択だ。ただし、断り方と、断った後のキャリアの作り方には技術がいる。この記事でそこまで書く。

出世したくない人が増えている。理由は合理的だ

管理職になりたくない若手・中堅は、いまや多数派に近い。各種の意識調査でも、管理職志向は年々下がり続けている。理由を並べれば、当然の帰結だと分かる。

1. 割に合わない報酬

管理職手当は月数万円。その代わり、残業代が出なくなる(管理監督者扱い)会社が多い。プレイヤー時代の残業代と相殺すると、実質の時給が下がる逆転現象が普通に起きる。

2. 責任と業務の二重化

現場を離れられるわけではなく、プレイングマネージャーとして実務と管理の両方を背負う形が主流だ。部下の育成、評価、労務管理、上からの数字の詰め。仕事は2倍、給料は微増。

3. 罰ゲーム化した中間管理職

上からは目標を詰められ、下からはハラスメントを警戒され、板挟みで消耗する。あなたの職場の課長を見てほしい。あの働き方を、月数万円の手当でやりたいか。やりたくないと感じる感覚は、壊れていない証拠なんよ。

それでも、断る前に知っておくべき現実

出世回避を選ぶ前に、天秤の反対側も正直に見ておく。断定調のこの記事でも、ここはフェアに書く。

  • 年収の天井は下がる。多くの日本企業では、管理職にならない限り年収の上限が決まっている。生涯年収では大きな差になり得る
  • 社内での発言力と守られ方が変わる。リストラや再編の局面で、役職は一定の防壁になる側面がある
  • 40代以降の転職市場で、マネジメント経験の有無は大きな分岐になる。求人の幅が変わるのは事実だ

つまり、出世回避は「楽な道」ではなく、別のリスクを引き受ける選択だ。ここを理解した上で選ぶなら、それは立派な戦略だ。理解せずに逃げると、40代で選択肢の狭さに直面する。

あわせて読みたい市場価値の高め方。年収を決めるのはスキルより「希少性」だ

昇進を断る方法。角を立てない技術

打診を断ると決めたら、伝え方だ。真正面から「嫌です」と言うと、意欲なしの烙印を押されて、その後の待遇に響きかねない。

断りの基本形

「ありがたいお話ですが、私は◯◯の専門性を深める形で会社に貢献したいと考えています。現場での成果でお返しさせてください」

ポイントは、拒否ではなく別の貢献の形を示すことだ。「管理職が嫌」ではなく「専門職として貢献したい」。同じ内容でも、意欲の表明として伝わる。

使える理由づけ

  • 専門性を深めたい(王道。嘘でなければ一番通りやすい)
  • 家庭の事情で、当面は業務量を増やせない(事実なら有効。深掘りされない)
  • 今のプロジェクトを完遂したい(先延ばし型。時間稼ぎになる)

やってはいけない断り方

  • 「自信がないので」→ 謙遜のつもりが、能力不足の自己申告として記録される
  • 「管理職は罰ゲームなので」→ 本音でも、目の前の管理職を否定する言葉は敵を作る
  • 曖昧に濁して先延ばし→ 何度も打診され、そのたびに消耗する。方針は一度で明確に伝えろ

断った後のキャリアの作り方。ここが本体だ

昇進を断ること自体は簡単だ。難しいのは、断った後も価値ある人材であり続けることだ。戦略は3つある。

戦略1:専門性で希少になる

管理はしないが、この領域ならあの人、という状態を作る。年収は役職ではなく希少性でも上げられる。考え方は市場価値の高め方。年収を決めるのはスキルより希少性だに書いた通りだ。専門職コース(エキスパート職)の制度がある会社なら、乗れるか人事に確認しろ。

戦略2:出世の圧が弱い環境に移る

会社によって、昇進への圧は全く違う。年功で全員管理職コースに乗せる会社もあれば、専門職が尊重される会社もある。今の会社で断り続けて消耗するより、プレイヤーのままで評価される会社に移る方が早いこともある。

自分がどんな働き方に向いているか、一度データで確認しておくといい。

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数分で、自分の特性と向いた働き方の傾向が出る。マネジメント適性が本当にないのか、単に今の会社の管理職像が嫌なだけなのか。ここが切り分けられると、断る判断にも自信が持てる。

戦略3:収入の柱を役職以外に作る

昇進で失う年収の伸びしろを、副業で補う考え方だ。会社での役職争いから降りると、時間と精神の余力が生まれる。その余力を副業に投資する。始め方は会社員の副業は何から始めるべきか。結論、スキルの切り売りからだにまとめてある。

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「一度やってみてから決める」も選択肢に入れておけ

断る前提で書いてきたが、もう1つの道も置いておく。打診された昇進を、期限付きの実験として受ける道だ。

マネジメントの向き不向きは、やってみないと分からない部分が確かにある。プレイヤーとして優秀な人が管理に苦しむ例は多いが、逆に、やってみたら人を育てる方が性に合っていた、という例も実際にある。私自身、ディレクターへの昇格は不安の方が大きかったが、やってみて得たものは大きかった。

受ける場合のコツは、自分の中で判定期限を決めておくことだ。1年やって、消耗が利得を上回るなら、降格願いか転職で戻ればいい。管理職経験は、たとえ合わなくても職務経歴書に書ける資産として残る。「向いていないと分かった」も、実験の立派な成果なんよ。

断るか、期限付きで試すか。どちらでもいい。決め手は、あなたが5年後にどちらの自分を想像して嫌じゃないかだ。

私も出世コースから降りた側の人間だ

実体験を書いておく。私はUIデザイナーからディレクターに昇格した経験がある。マネジメント側の仕事も知った上で、4社目ではあえて年収を下げて、役職より働き方(リモート・育休制度)を優先する会社を選んだ。

その選択の結果が、男性での1年育休と沖縄移住だ。出世の階段を登り続けていたら、どちらも手に入らなかった。そして収入は、役職ではなく副業とその後の独立で作った。

出世は、人生の選択肢の1つでしかない。階段を登る人生も、降りて別の道を作る人生も、どちらも正解になり得る。ダメなのは、登りたくないのに惰性で登って、中腹で身動きが取れなくなることだけなんよ。

まとめ

  • 出世したくないのは甘えではない。報酬と負荷の実態を見れば合理的な感覚だ
  • ただし出世回避は楽な道ではなく、年収の天井と40代の選択肢という別のリスクを引き受ける選択だ
  • 断るときは拒否ではなく、別の貢献の形として伝えろ
  • 断った後は、専門性で希少になる・環境を移る・収入の柱を増やす。この3戦略で価値を作れ
  • 登る人生も降りる人生も正解になり得る。惰性だけが不正解だ

出世したくないと感じた時点で、あなたはもう自分の価値観を持っている。あとはその価値観を、戦略に変換するだけだわ。

よくある質問

出世したくないのは変ですか?

変ではなく多数派に近い。管理職は手当数万円で残業代が消え、実務と管理の二重負担になる実態を見れば、避けたくなるのは合理的な感覚だ。ただし出世回避は年収の天井という別のリスクを引き受ける選択でもある。

昇進の打診はどう断ればいいですか?

拒否ではなく、別の貢献の形として返せ。専門性を深めて貢献したい、現場の成果でお返ししたい、と伝えれば意欲の表明として通る。自信がないという断り方だけはするな。能力不足の自己申告として記録される。

管理職にならないと年収は上がりませんか?

多くの日本企業では役職が年収の天井を決めるのは事実だ。ただし抜け道はある。専門職制度のある会社を選ぶ、希少なスキルの掛け算で市場価値を上げる、副業で収入の柱を足す。役職以外の上げ方は実在する。

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記事を読んで終わりにせず、自分に合うサービスの当たりを付けるところまで進んでほしい。ここまでが今日の一歩だ。

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