退職前に、会社のパソコンを整理したい。私物のメールや写真は消したい。自分が作った資料は、持ち帰ってもいいのか。全部消して辞めたい気持ちもある。
先に言う。消していいのは私物だけ。業務データは会社のものだ。自分が作ったファイルでも、消すと損害賠償の対象になり得る。線引き、消す前にやること、持ち出しの線、後で言われた時の対応を書く。
先に一文で。退職時に消していいのは私的なメール・ブラウザの履歴とパスワード・個人アカウントのログイン情報・私物の写真だけで、業務で作ったファイルやメールは自分が作ったものでも会社の所有物なので消さず持ち出さず、保存場所を引き継ぎ資料と最終日のメールで上司に示してから辞めるのが正解だ。
この記事の要点
- 業務データは会社のもの。自分が作っても消さない、持ち出さない
- 消していいのは、私的なメール・履歴・パスワード・個人アカウント・私物の写真
- 消す前に、業務データの保存場所を上司に書面で示す
- 持ち出しは秘密保持義務違反になり得る。実績は数字のメモで残す
消していいもの、消してはいけないもの
| 消していい | 消してはいけない |
|---|---|
| 私的なメール(家族・友人・転職活動) | 業務のメール(送受信すべて) |
| ブラウザの履歴・保存したパスワード・自動入力 | 業務で作ったファイル・資料・データ |
| 個人アカウントのログイン情報(SNS・通販・銀行) | 顧客・取引先の情報、見積、契約 |
| 私物の写真・音楽・個人のファイル | 社内のチャットの履歴 |
| 私用でインストールしたアプリ | 業務のアプリ・ライセンス |
| 個人のクラウドとの同期設定 | 共有フォルダの中身 |
判断に迷うものは、消さない。消して困るのは会社で、残して困るのはあなたではない。
業務データを消すとどうなるか
弁護士の相談サイトには、退職時に業務データを消して会社から損害賠償を求められた相談が多数ある。法的には、業務の一環で作った文書は会社の著作物で、消す行為は業務妨害や損害賠償の対象になり得る。
| 行為 | 結果 |
|---|---|
| 業務データを意図的に全部消した | 損害賠償の請求、悪質なら業務妨害 |
| 業務データを持ち出して転職先で使った | 秘密保持義務違反、不正競争防止法違反の可能性 |
| 私物データだけ消した | 問題ない |
| 業務データを整理して、保存場所を引き継いだ | 正しい退職の形 |
嫌な会社ほど、全部消して辞めたくなる。だが、消した瞬間にあなたが加害者になる。辞めた後に会社と関わらないために、消さない。
消す前にやること
- 業務データの保存場所を一覧にする。共有フォルダのパス、ファイル名、何のデータか
- 引き継ぎ資料に書く。保存場所の一覧を、引き継ぎ資料の1ページにする。作り方は引き継ぎ資料の作り方へ
- ローカルに置いていた業務ファイルを、共有フォルダに移す。デスクトップやマイドキュメントに残っている業務データは、共有に移してから
- 上司にメールで伝える。「業務データは◯◯に置きました。一覧は引き継ぎ資料の◯ページです」。送信済みメールを自分でも控える
- その後に、私物データを消す
4のメールが、後で「データがない」と言われた時の証拠になる。
持ち出してはいけないもの
| 持ち出してはいけない | 理由 |
|---|---|
| 顧客リスト・名刺データ | 個人情報と営業秘密 |
| 見積・契約・価格表 | 営業秘密 |
| 仕様や図面・ソースコード・デザインデータ | 会社の著作物 |
| 社内の資料・議事録・マニュアル | 自分が作っても会社のもの |
| 業務のメールの転送 | 私用アドレスへの転送は、持ち出しと同じ |
自分の実績を残したいなら、数字をメモする(担当件数・達成率・改善した時間)。ファイルは持ち出さない。ポートフォリオに使いたいなら、会社の許可を取り、公開できる範囲を確認する。退職時に書かされる秘密保持の誓約書の扱いは退職時の誓約書を拒否できるかへ。
私物データの正しい消し方
- メール。私的なメールを検索して削除。ゴミ箱も空にする
- ブラウザ。履歴・Cookie・保存したパスワード・自動入力を消す。個人のアカウントからログアウト
- 同期。個人のクラウド(写真・ファイル)との同期を切り、会社のPCからアカウントを削除
- アプリ。私用でインストールしたものをアンインストール
- スマホ。会社の携帯なら、個人のアカウントとアプリを消して初期化する前に、会社の手順を確認
パソコンの初期化は自分でやらない。初期化は会社の管理者の仕事で、勝手に初期化すると業務データを消したことになる。最終出社日の返却物と手順は最終出社日に何をするか、制服などの貸与品は退職時の制服のクリーニングに書いた。
退職後に「データがない」と言われた時
- 最終日に送ったメールと、引き継ぎ資料の保存場所の一覧を示す
- 覚えている限りの保存場所を伝える
- 私物データを消したことは問題にならないと、落ち着いて答える
- 意図的に消していないなら、責任を問われることはない。しつこい場合は、書面でのやり取りに切り替える
3分で診断:辞めるコスト診断——退職の手続きと返却物を含めて、辞めるまでの全体を先に一覧にする。
よくある質問
自分が作ったテンプレートやマクロを、次の会社で使いたいです
会社で作ったものは会社のものだ。持ち出さず、次の会社で作り直す。作り方は頭の中にあるので、作り直せる。
会社のパソコンで転職活動をしていました。バレますか?
ブラウザの履歴とメールを消せば、通常は分からない。ただし、会社が監視ツールを入れていれば記録は残る。転職活動は私物の端末でやるのが原則だ。
業務データのバックアップを私用のクラウドに取っていました
退職前に消す。残したまま辞めると、持ち出しと同じ扱いになる。消したことを、必要なら上司に伝える。
退職時のデータ整理チェックリストをLINEで無料配布中
消していいもの・いけないものの一覧、保存場所を伝えるメールの文面、私物データの消し方の手順を公式LINEで無料配布している。消していいのは私物だけ。業務データは会社のものだ。



