退職の手続きで、誓約書を渡された。秘密保持、競業避止、損害賠償。サインしないと手続きが進まないと言われた。サインしていいのか、断れるのか。
先に言う。納得できない誓約書は、拒否していい。サインの義務はない。ただし、誓約書がなくても守る義務があるものと、サインしても無効になるものがある。条項ごとの見方、断り方、拒否された時の対処を書く。
先に一文で。退職時の誓約書にサインする義務はなく、秘密保持は誓約書がなくても守る義務がある一方で競業避止は期間・地域・対象が広すぎると無効になるので、条項を1つずつ確認して納得できない部分は修正を求めるか拒否し、拒否を理由に離職票や退職金を止められたら書面で請求してハローワークと労基署に相談するのが正解だ。
この記事の要点
- サインの義務はない。納得できなければ拒否できる
- 秘密保持は誓約書がなくても守る義務がある。サインの有無で変わらない
- 競業避止は、期間・地域・対象が限定され代償措置があるかで有効性が決まる。広すぎれば無効
- 拒否を理由に離職票・退職金を止めるのは違法
条項ごとの見方
| 条項 | 中身 | サインするか |
|---|---|---|
| 秘密保持 | 在職中に知った営業秘密・個人情報を漏らさない | サインしてもしなくても義務はある。内容が一般的なら問題ない。「業務で知った一切の情報」のように広すぎる場合は範囲の修正を求める |
| 競業避止 | 退職後◯年、同業他社への就職・起業を禁じる | 慎重に。期間1〜2年・地域・対象業務が限定され、代償措置があるか。広すぎれば無効だが、争いの手間は残る。同業に転職する予定があるならサインしない |
| 引き抜き禁止 | 元同僚や顧客を勧誘しない | 一般的な内容なら問題ない |
| 損害賠償 | 違反した場合に◯万円を払う | 金額が固定で高額なら拒否。違約金の予定は労基法で禁止されている |
| 貸与品の返却・私物の放棄 | 返却済みの確認、残した私物の処分 | 事実どおりなら問題ない。返却前にサインしない |
| 誹謗中傷の禁止 | SNSや口コミで会社を中傷しない | 事実の投稿まで禁じる文言なら修正を求める |
入社時の誓約書の見方は入社時の誓約書にサインを拒否できるか、秘密保持契約の条項の読み方はNDAのチェック項目に書いた。
競業避止の有効性。4つで判断される
法律事務所の解説を並べると、退職後の競業避止義務の有効性は次の4つで判断される。
- 守るべき会社の利益があるか。営業秘密や特別なノウハウに接していた立場か
- 期間。1〜2年程度までが限度。それ以上は無効になりやすい
- 地域・対象業務の限定。全国・全業務なら無効になりやすい
- 代償措置。競業避止の見返りに手当や退職金の加算があるか
4つが揃っていない競業避止は、サインしても無効と判断される可能性が高い。ただし無効かどうかは争って初めて決まるので、同業への転職を予定している人は、最初からサインしないのが安全だ。
断り方。文面で
「誓約書の内容を確認しました。秘密保持については在職中と同様に守ります。ただし競業避止の条項(第◯条)は、期間と対象が広く、今後の職業選択に影響するため、この内容では署名できません。期間を1年、対象を◯◯業務に限定する修正をいただければ署名します。」
全部を拒否する必要はない。問題のある条項だけ修正を求めると、会社も応じやすい。応じなければ、サインせずに退職手続きを進める。誓約書は退職の条件ではない。
拒否を理由に手続きを止められた時
| 止められたもの | 対処 |
|---|---|
| 離職票 | 交付は会社の義務。出なければハローワークに申し出る。ハローワークから会社に催促が入る |
| 退職金 | 就業規則に定めがあれば請求権がある。書面で請求し、出なければ労基署へ |
| 源泉徴収票 | 発行は義務。税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せる |
| 私物の返却 | 誓約書と関係なく返す義務がある。私物を郵送で受け取る方法へ |
誓約書のサインを手続きの条件にすること自体が、会社側の問題だ。労基署でできることは労働基準監督署に相談するとどうなるかに書いた。
サインしてしまった後
すでにサインした競業避止が広すぎる場合、無効を主張して争う余地はある。ただし争いには手間がかかる。同業に転職する前に、弁護士に条項を見せて有効性の見込みを聞く。秘密保持の条項は、サインの有無にかかわらず守る。持ち出した情報があれば、転職前に返す。
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よくある質問
誓約書にサインしないと、退職できないと言われました
退職は誓約書と無関係に成立する。申し出から2週間で契約は終わる。誓約書を退職の条件にすることはできない。
退職時に、在職中に作った資料を持ち出していいですか?
会社の業務で作った資料は会社のもので、持ち出すと秘密保持違反や損害賠償の対象になり得る。自分の経歴を説明するための実績の数字は、資料そのものでなく、職務経歴書に要約して書く。
競業避止の誓約書にサインして、同業に転職したらどうなりますか?
会社が差止めや損害賠償を求めてくる可能性はあるが、条項が広すぎれば無効と判断されることが多い。実際に請求まで来る例は少ないが、営業秘密を持ち出していた場合は別だ。持ち出さないことが最大の守りになる。
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誓約書の条項ごとの確認項目、修正を求める文面、離職票・退職金・源泉徴収票を止められた時の請求文を公式LINEで無料配布している。納得できない誓約書は、拒否していい。



