入社時に誓約書を渡された。あるいは、フリーランスで案件を受ける時にNDAを送られてきた。読んでもよく分からないまま、名前を書いて返している。
見るのは6項目だけだ。秘密の定義が広い契約は、あとで何でも違反にできる。会社員とフリーランスの両方の立場で書く。
先に一文で。NDAで見るのは①秘密情報の定義②目的(目的外使用の禁止)③開示できる範囲④有効期間⑤返還・破棄⑥損害賠償の6項目で、特に①が「本業務に関連して知り得たすべての情報」のように広すぎる契約は危なく、競業避止は秘密保持と性質が違って期間・範囲・代償措置がないと無効になりうる。
この記事の要点
- 見る6項目|定義/目的/開示範囲/期間/返還破棄/損害賠償
- 一番重要なのは秘密情報の定義。広すぎる契約は受けない
- 期間は3〜5年が一般的。無期限は避ける
- 再委託先への開示が認められていないと外注が使えない
- 競業避止は別物。期間・地域・職種の限定と代償措置がないと無効になりうる
見る6項目
| # | 項目 | 望ましい形 |
|---|---|---|
| 1 | 秘密情報の定義 | 開示時に秘密である旨を明示したものに限定。口頭は一定期間内に書面で特定 |
| 2 | 目的 | 本件業務の遂行のため、と限定される |
| 3 | 開示できる範囲 | 従業員、再委託先、税理士・弁護士などの専門家 |
| 4 | 有効期間 | 契約終了後3〜5年。無期限は避ける |
| 5 | 返還・破棄 | 返還か破棄かが明示。破棄証明書の要否 |
| 6 | 損害賠償・差止め | 違約金の定額条項(一律◯◯万円)が入っていないか |
定義から除外されるべきもの
秘密情報の定義には、次が除外されていることを確認する。
- 公知の情報(既に公開されているもの)
- 開示前から自分が知っていた情報
- 第三者から適法に得た情報
- 独自に開発した情報
これが除外されていないと、自分の頭の中にある一般的な知識を次の仕事で使うことまで制限されかねない。
危ない書き方
「乙は、本業務に関連して知り得たすべての情報を秘密として取り扱うものとする。」
これだけだと、何が秘密なのかが特定されない。後から何でも違反にできてしまう。修正を求めるなら、こう返す。
「秘密情報の範囲について、開示の際に秘密である旨を明示していただいたものに限定させていただけますか。口頭でお伝えいただいたものは、2週間以内に書面でご特定いただく形でお願いできますでしょうか。」
契約全体のチェックは業務委託契約書のチェックポイントの記事、著作権の条項は著作権を全部譲渡してはいけない理由の記事で書いた。
フリーランスが特に見る2つ
| 項目 | なぜ効くか |
|---|---|
| 再委託先への開示 | 認められていないと、外注が一切使えなくなる |
| 実績としての公開 | NDAで全部縛られると、ポートフォリオに載せられない |
実績を出せない案件が続くと、次の営業ができなくなる。単価と同じくらい大事な条件だ(フリーランスの単価の決め方の記事)。
会社員の入社時の誓約書
入社時の誓約書には、秘密保持と競業避止が同じ紙に並んで書かれていることが多い。この2つは性質が違う。
| 秘密保持 | 競業避止 | |
|---|---|---|
| 対象 | 情報 | 働き方そのもの |
| 認められ方 | 比較的広く認められる | 職業選択の自由(憲法22条)の制限。無条件では認められない |
競業避止が有効になる条件
裁判で有効性が見られるのは5つ。
- 会社に守るべき正当な利益があるか
- その従業員の地位(一般の従業員か、機密に触れる立場か)
- 制限の期間(1年程度なら認められやすい。長いほど厳しく見られる)
- 地域と職種の範囲(無限定は不利)
- 代償措置があるか(在職中の手当、退職時の金銭)
これらを欠く広すぎる条項は、公序良俗に反して無効とされることがある。「退職後3年間、同業他社への就職を禁じる」とだけ書かれていても、そのまま通るとは限らない(独立前に会社員のうちにやることの記事)。
ただし、署名した以上は争いになった時に説明が要る。範囲が広すぎると感じたら、その場で期間や範囲の限定を求めるほうが早い。
退職時に渡される書類
| 書類 | 見るところ |
|---|---|
| 退職時の誓約書 | 在職中の誓約書と内容が違っていないか(後出しで範囲が広がることがある) |
| 秘密情報の返還・破棄の確認書 | 何を返すのか具体的に |
| 競業避止の確認 | 期間・地域・職種と代償措置 |
退職時の誓約書には、署名の義務がない場合がある。就業規則に定めがなければ、署名を拒否できる余地がある。範囲に納得できないなら、その場で押さない(退職手続きで会社から渡される書類の記事)。
私の場合
私は転職を4回して、今はフリーランスだ。会社員の時に一番読まなかったのが、入社初日に渡された誓約書だった。人事の前で、他の書類と一緒に流れ作業で名前を書いた。後から独立を考えた時に、あの紙に何が書いてあったのかを思い出せなかった。コピーをもらっておくだけで、後の選択肢が変わる。今は、受け取った契約書は必ず1部保管している。
契約の穴は、保険でも埋められる
NDAの範囲を詰めても、情報漏えいや納品物の不備で損害賠償を求められるリスクは残る。契約書の文言だけでは埋まらない部分だ。
FREENANCEは、無料の口座開設で業務中の事故・情報漏えい・納品物の不備などに備える補償が付く(あんしん補償)。フリーランスは会社の保険に守られていないので、最低限の備えとして持っておく価値がある。
*クリックすると公式サイトが開く。口座の開設は無料で、開設すると基本の補償が付く。上位の補償や請求書の即日払いは有料の枠になる。*
登録後の流れ|① Webで登録(無料) → ② 本人確認 → ③ 口座開設と同時に基本の補償が付く
使わなくていい人|すでにフリーランス向けの賠償責任保険に入っている人。補償が重複する。
3分で診断:副業・独立タイプ診断——資産型か労働型か、自分に向く副業の型が8問で分かる。無料・登録不要。
よくある誤解
「NDAはどれも同じ」。秘密情報の定義次第で、縛られる範囲が10倍変わる。
「誓約書に署名したら退職後も同業に行けない」。競業避止は、期間・範囲・代償措置がないと無効になりうる。
よくある質問
NDAに修正を求めたら失注しませんか?
秘密情報の定義の限定や再委託先の追加は、実務上ふつうの依頼だ。断られたとしても、その理由から相手の姿勢が分かる。
口頭で聞いた話も秘密ですか?
契約の書き方次第。口頭を含める契約なら、一定期間内に書面で特定する手当があるかを見る。なければ範囲が不明確になる。
独立と転職の資料をLINEで無料配布中
NDAの6項目と競業避止の5条件をそのままチェックできる記入表を公式LINEで無料配布している。定義が広い契約は、受ける前に直そう。

