退職届は書けた。で、これをどうやって渡すのか。誰に、いつ、何と言って。机に置いておけばいいのか。手渡しなのか。
渡し方には型がある。そして順番を間違えると、内容が正しくても揉める。場面ごとに全部書く。
先に一文で。退職届は口頭で意思を伝えた後に、直属の上司へ、2人の場で、封筒に入れて両手で渡すのが型で、言葉は「一身上の都合により◯月末で退職させていただきたく、お持ちしました」で足りる。
この記事の要点
- 渡す相手は直属の上司。飛ばすと関係がこじれる
- 順番は、口頭の意思表示→調整→届の提出。書面から入らない
- 渡す場は2人で話せる席。立ち話と置き逃げは避ける
- 受け取ってもらえない時は、内容証明という次の手がある
誰に渡すか。直属の上司一択の理由
届の宛名は社長でも、渡す相手は直属の上司だ。組織は報告の経路で動いていて、部下の退職を上司が人事から聞かされる形になると、上司の管理責任の面子が潰れる。潰れた面子は、残りの在籍期間のあなたに返ってくる。
上司がハラスメントの当事者で直接渡したくない場合は例外で、人事部か相談窓口に事情ごと持ち込んでいい。この場合は飛ばすことに正当性がある。
順番。書面から入らない
一番多い失敗が、ある日いきなり退職届を差し出す形だ。書面は最後通告の性質を持つので、相手は「相談の余地なし」と受け取り、感情的になりやすい。
円滑な3段はこうなる。
- 口頭で意思を伝える|「ご相談があります」と時間を取ってもらい、退職の意思と希望日を口頭で伝える
- 調整に応じる|引き継ぎや退職日の調整の話をする。引き止めへの対応はこの記事の型で
- 固まったら届を出す|退職日が合意できたら、退職届を清書して提出する
例外も書いておく。口頭で何度伝えても取り合ってもらえない、ハラスメントで対話が成立しない。この場合は最初から書面で出して、提出の記録を残す方が正しい。順番の作法は、対話が成立する相手にだけ適用される。
渡す場面の作法。封筒・言葉・所作
封筒|白無地の封筒に入れ、表に「退職届」、裏に所属と氏名。用紙と封筒の選び方はコンビニで揃える記事で書いた。
場|会議室など2人で話せる場所。朝イチの忙しい時間と、金曜の終業間際は避け、上司の落ち着いていそうな時間に「少しお時間いただけますか」と切り出す。
言葉|差し出す時はこれで足りる。
「先日お伝えした件です。一身上の都合により、◯月末日をもって退職させていただきたく、お持ちしました。お受け取りいただけますでしょうか」
所作|封筒の向きを相手が読める向きに直し、両手で渡す。お辞儀は普通の会釈でいい。儀式のように深々とやる必要はない。
受け取ってもらえない時
「受け取らない」「預かれない」と拒否される場合がある。結論、受け取り拒否で退職を止めることはできない。退職は労働者の一方的な意思表示で成立し、会社の受理は要件ではない。
対処の階段は、①上司の上司か人事に提出する②それも拒まれたら、内容証明郵便で会社宛てに送付する(到達の記録が残り、受け取り拒否が無意味になる)。詳細な手順は退職届を受け取ってもらえない時で書いた。
郵送で送る場合
体調不良で出社できない、退職代行を使わず自分で送りたい。郵送にも作法がある。
- 退職届の封筒(白封筒)を、一回り大きい郵送用封筒に入れる二重封筒にする
- 添え状を1枚つける。「体調不良により出社が難しく、郵送にて失礼いたします」
- 普通郵便でなく、特定記録か簡易書留で送り、送った記録を残す
場面別の細部。専用記事で答える
- 封筒から出すのか、封のまま渡すのか|差し出す10秒の作法
- 出すタイミングは朝か夕方か|アポで相手に選ばせる技術
- コピーを取って保管すべきか|控えと確認メールの3点セット
- 印鑑はシャチハタでいいのか|朱肉の認印で正解だ
よくある誤解
「退職届はメールやチャットで送ってはいけない」。法的には、退職の意思表示は口頭でもメールでも有効だ。書面の届が慣行として求められるだけで、出社できない事情があるなら、メールで意思を伝えてから郵送で届を送る形で全く問題ない。形式より、意思表示の記録が残ることの方が本体になる。
「渡す時に理由を詳しく説明しないと失礼だ」。届を渡す段階は、意思が固まった後の手続きだ。理由は「一身上の都合」で通してよく、深掘りされても「総合的に判断しました」で足りる。詳細な理由は、引き止め交渉の燃料になるだけのことが多い。
よくある質問
上司が出張や休みで、なかなか渡せません
退職日から逆算して時間がないなら、オンライン会議で口頭の意思を伝え、届は郵送か、出社日に手渡しでいい。伝えるのが先、紙は後。この順番さえ守れば形式は柔軟でいい。
渡した後、同僚にはいつ言えばいいですか?
正式な公表のタイミングは上司・会社と合意して決めるのが作法だ。届を出した直後に自分から言い回ると、情報の管理を乱したとして残り期間が気まずくなる。「公表はいつ頃、どの範囲からにしましょうか」と上司に確認しておくと綺麗に運ぶ。
退職の資料をLINEで無料配布中
退職の切り出しから届の提出までの進行表(言葉の例つき)を公式LINEで無料配布している。書くより渡す方が緊張する。でも型どおりにやれば、5分で終わる手続きだ。


