職務経歴書を書こうとして、手が止まった。自分が何をやってきたのか、思い出せない。5年働いたはずなのに、書けることが3行しかない気がする。
安心してほしい。書けないのは実績がないからではなく、棚卸しをしていないからだ。記憶は放っておくと直近の仕事しか残らない。今夜、紙とペンでできる手順を置いておく。
この記事の要点
- 記憶からではなく、記録から書く。メール・評価シート・手帳を使う
- 手順は3段階。時系列で並べる→結果を足す→パターンを線で結ぶ
- 実績の基準を下げる。当たり前にやってきたことほど価値がある
- 棚卸しの成果物は、職務経歴書と面接の実例の在庫になる
準備。記憶ではなく記録を集める
始める前に、記録を手元に集める。ここをやるかどうかで成果が倍変わる。
- 過去のメール・チャット — 送信済みを月単位で遡ると、忘れていた業務が出てくる
- 評価シート・目標管理の記録 — 当時の目標と結果がそのまま残っている
- 手帳・カレンダー — 何に時間を使っていたかの事実
- 給与明細 — 昇給・昇格のタイミングが分かる
記憶で書くと、直近1年と印象的な出来事だけになる。記録で書くと、自分でも忘れていた仕事が並ぶ。棚卸しの質は、この準備で決まる。
手順1、時系列で仕事を全部書き出す
紙を横に使って、左端に入社年を書く。そこからやってきた仕事を、時系列で全部書き出す。
要点は2つある。
粒度は「業務」単位まで割る。「営業をやっていた」ではなく、「新規開拓の電話」「既存顧客の定期訪問」「見積書の作成」「クレーム対応」まで割る。キャリアの材料は、職種名ではなく業務の中にある。
小さいものも捨てない。マニュアルを作った、朝会の進行をした、新人に教えた、Excelの集計を自動化した。本業の脇でやっていたことが、後で一番の材料になることが多い。
この段階では評価しない。とにかく数を出す。30個を目安にする。
手順2、それぞれに「どうなったか」を足す
書き出した業務の右側に、結果を足していく。
ここで詰まる人が多いので、結果を引き出す質問を4つ置いておく。
- その業務の前後で、何が変わったか — 時間が減った、ミスが減った、売上が増えた、誰かが楽になった
- 数字にできるものはないか — 件数、金額、期間、人数。ざっくりの概算でいい
- 誰に、何と言われたか — 感謝された、頼られた、任されるようになった
- 自分なりに工夫した点はどこか — 結果が地味でも、工夫は語れる材料になる
全部の業務に結果がなくていい。30個のうち10個に結果がつけば、職務経歴書1枚分の材料としては十分だ。
手順3、パターンを線で結ぶ
最後に、紙の全体を眺めて共通するパターンを探す。
- 結果が出た業務に、共通する条件はないか(一人作業か、チームか。数字か、人か)
- 消耗した業務に、共通する条件はないか
- 会社が変わっても繰り返しているパターンはないか
線で結べたパターンが、あなたの再現性のある強みと、避けるべき条件だ。1社の中の1つの実績は偶然かもしれないが、環境が変わっても繰り返されたパターンは、次の環境でも再現される可能性が高い。
この読み方の部分をもっと深くやりたい人は、社会人の自己分析のやり方に3つの質問として書いた。棚卸しが事実の整理で、自己分析はその解釈になる。
成果物の使い道。3つある
棚卸しで出来た紙は、そのまま3つに使える。
1、職務経歴書の下書きになる。時系列の業務一覧と結果は、職務経歴書の職務内容欄そのものだ。書くことがないと感じていた人は職務経歴書に書くことがない人への記事とセットで使ってほしい。
2、面接の実例の在庫になる。面接で聞かれる「工夫した経験」「困難を乗り越えた経験」は、この紙から選んで話せばいい。その場で思い出しながら話すのと、在庫から選んで話すのでは、精度がまるで違う。
3、市場価値を測る土台になる。棚卸しした経歴で、市場がどう反応するかを見る。ここまでやると、自分の値段が推測ではなく事実で分かる。
*クリックすると公式サイトが開く。質問に答えると想定年収と、経歴を求める企業からのスカウトが見られる。*
登録後の流れ|① 棚卸しした内容をもとに経歴を登録する(10分弱) → ② 想定年収が表示される → ③ どんな企業が反応するかを観察する
測り方の全体像は市場価値の測り方にまとめてある。
一人で詰まる場所。2つある
この手順は一人で完結するように書いたが、詰まりやすい場所が2つある。
詰まり1、手順2で結果が書けない。自分の仕事が当たり前に見えて、何が変わったのか自分では思い出せない。当たり前の壁と呼んでいるが、これは自分一人では越えにくい。
詰まり2、手順3で線が結べない。事実は並んだが、どれが強みでどれがただの作業なのか、判断がつかない。
どちらも、質問してくれる相手がいると突破できる。「それは他の人もやっていましたか」「なぜあなたに頼まれたと思いますか」と掘られると、自分では見えなかった価値が言葉になる。
行き先が決まっている人は、エージェントの面談でこの壁を越えられる。書類作りの一環として棚卸しを手伝ってもらえるからだ。行き先が決まっていない人は、求人を紹介しない型の相談の方が噛み合う。求人の話をせずに、掘る作業そのものに時間を使えるからだ。
*クリックすると公式サイトが開く。求人紹介をしないキャリアコーチングで、初回の相談は無料だ。*
相談の流れ|① 無料相談を申し込む → ② 棚卸しで詰まった場所を話す → ③ 続けるかは内容と料金を聞いてから決めればいい
求人を紹介されないから、転職するかどうかを保留したまま掘れる。本編は有料なので、無料相談で合うかを見てから決めればいい。
あわせて検索される疑問に、先に答えておく
棚卸しはどのくらいの頻度でやるべきですか
転職のたびにゼロからやるのは非効率だから、年1回の更新を勧めている。年末や期末に、その年に増えた業務と結果を紙に足す。10分で終わる。この習慣がある人は、転職を考えた瞬間に職務経歴書の材料が揃っている状態から始められる。転職しない年も、評価面談や昇格の申請でそのまま使えるから、無駄にならない。
転職回数が多くて、時系列に並べると不利に見えそうです
並べる段階では、不利かどうかを考えなくていい。棚卸しは提出物ではなく材料集めだからだ。そして実際のところ、会社をまたいで繰り返されているパターンは、転職回数が多い人にしか作れない証拠になる。環境が4回変わっても毎回頼まれたことは、どこでも通用する再現性の証明だ。私は転職4回だが、書類ではこの形で語ってきた。回数は、パターンの証拠の数に変換できる。
棚卸しした結果、何も強みがない気がして落ち込みました
その感覚が出たときは、基準が「他人に勝てる特技」になっている。実務の強みの基準はもっと低くていい。納期を守る、報告を落とさない、嫌な連絡を先にやる、分からないことを聞ける。どれも、できない人が実在する。そして棚卸しの紙に30個の業務が並んだなら、あなたは30個の業務を任されて、こなしてきた人だ。その事実自体が、ゼロではない証拠なんよ。
よくある質問
キャリアの棚卸しは何をすればいいですか?
時系列で仕事を書き出し、結果を足し、パターンを線で結ぶ。記憶ではなくメールや評価シートの記録を見ながら書く。
棚卸しと自己分析は何が違いますか?
棚卸しは事実を並べる作業、自己分析は意味を読む作業だ。順番は棚卸しが先になる。
書き出しても、たいした実績がない気がします。
基準が高すぎる。ミスを減らした、手順を作った、後輩に教えた。当たり前にやってきたことほど、外から見ると価値がある。
棚卸しの記入シートをLINEで無料配布中
時系列の書き出しと結果を引き出す質問をまとめたシートを、公式LINEで無料配布している。記憶ではなく、記録から書くことだわ。


