自分の経験に市場価値があるのか分からない。特に社内の業務システムを触ってきた人ほど、「これは社内でしか通用しない」と思い込んでいる。
逆だ。業務システム、特にSAPやERPの領域は、経験の希少性がそのまま単価になる。なぜそうなるのかを、需要と供給の仕組みから書く。
この記事の要点
- 高く評価される理由は希少性。扱える人材が需要に対して足りていない
- 更新・刷新のプロジェクトが継続的に発生し、需要が途切れにくい
- 経験の売り方は、業務領域×フェーズ×規模の3点で書く
- 未経験からの経路は、業務側から入る道とIT側から入る道の2つ
なぜ高く評価されるのか。希少性の話
市場価値は希少性で決まる。市場価値は希少性で決まるという記事で書いた原則が、この領域では最も分かりやすい形で出る。
需要側の事情。
- 大企業の基幹業務(会計・購買・生産・販売)を支えるシステムであり、止まると事業が止まる
- システムの更新や刷新のプロジェクトが継続的に発生する。製品のサポート期限、法改正への対応、事業の再編。需要の発生源が複数ある
- 導入だけでなく、運用保守・改善の需要も長期にわたって続く
供給側の事情。
- 扱える人材の絶対数が限られている
- 業務知識とシステム知識の両方が要るため、片方だけでは務まらない
- 経験を積む機会そのものが、プロジェクトに入らないと得られない
この需給の差が、そのまま単価に出る。エンジニアの年収が商流の位置で決まるのと同じで、ここでは希少性が位置を押し上げる。
経験の売り方。3点で書く
この領域の経歴は、書き方で伝わり方が大きく変わる。製品名やモジュール名の羅列では、採用側が判断できない。
書くべきは3点。
- 業務領域——会計、購買、生産管理、販売管理、人事。どの業務を担当したか
- フェーズ——構想・要件定義・開発・テスト・導入・運用保守。どこを担当したか
- 規模——企業規模、プロジェクトの体制、対象拠点数
この3点が揃うと、採用側は自社の案件に当てはめて考えられる。
・製造業(連結売上◯◯規模)の生産管理領域で、要件定義から導入までを担当。国内3拠点への展開をプロジェクトメンバーとして推進した
書けない部分は概算でいい。規模を具体的に書けない場合は「複数拠点をまたぐ案件で」のように、機密に触れずに規模感を伝える書き方がある。この線引きの考え方はAIスキルを職務経歴書にどう書くかでも書いた通りだ。
窓口は、領域を理解している担当かで決まる
この領域の転職では、担当が業務システムの世界を理解しているかどうかで、紹介の精度がまるで違う。
理解していない担当だと、「システムエンジニア」という粗い括りで案件を出してくる。業務領域もフェーズも合っていない案件を見せられて、時間だけが消える。
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登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当から連絡が入り、経験した業務領域とフェーズを伝える → ③ 経験に合う案件の紹介と、単価や条件の相談ができる
面談では、上の3点(業務領域・フェーズ・規模)を先に伝えてほしい。これが揃っていれば、初回から具体的な案件の話になる。
未経験からの経路は2つある
この領域に、完全な未経験から直接入るのは難しい。だが経路はある。
経路1|業務側から入る
経理、購買、生産管理、人事。これらの業務経験を持つ人が、自社のシステム導入プロジェクトに業務側の担当として参画する。
この形なら、既にある業務知識が土台になる。そしてプロジェクトを経験すると、業務とシステムの両方が分かる人材という、最も希少なポジションに立てる。
社内のプロジェクトに手を挙げるのが、最も費用のかからない入口になる。
経路2|IT側から入る
システム開発の経験を持つ人が、ERPを扱う案件に参画する。SIerや、ERPを扱うベンダーへの転職が入口になる。
この場合、業務知識を後から積む形になる。技術は分かるが業務が分からない状態から始まるため、担当する業務領域を1つ決めて、そこで深めていくのが定石になる。
20代なら、この領域を選択肢に入れる価値がある
若いうちにこの領域に入る利点は大きい。
- 経験を積むほど希少性が上がる。時間が味方になる領域だ
- 業務知識は陳腐化しにくい。会計や生産管理の考え方は、システムが変わっても残る
- 需要が継続的に発生するため、キャリアの見通しが立てやすい
20代でキャリアの方向を決めかねている人は、方向を決めてから動くのが順番になる。20代後半の転職は遅いのかで書いた通り、この年代は市場で最も需要が厚い。その強さを、伸びる領域に投じる判断は合理的だ。
方向そのものから相談したい20代なら、若手向けの窓口から入る手もある。
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登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当から連絡が入り、面談の日程を決める → ③ 経歴の棚卸しと求人紹介を受けられる
正社員以外の選択肢も視野に入る
この領域は、経験を積むとフリーランスの案件単価が高くなる領域でもある。
- 正社員としてプロジェクトに参画する
- フリーランスとして案件単位で入る
- 両方の数字を並べて、自分の労働の値段を確認する
エンジニア転職サービスの比較で書いた通り、正社員の給与とフリーランスの案件単価は、同じ労働を別の物差しで値付けしている。独立する気がなくても、この2つを並べると今の還元率が見える。
あわせて検索される疑問に、先に答えておく
資格は必要か
製品ごとの認定資格は存在し、持っていれば評価の材料になる。ただし実務経験の方が優先される領域でもある。資格だけで実務経験がない状態は、案件にアサインする側から見ると判断が難しい。実務に入る機会があるなら、資格より先にそちらを取る。資格は、実務経験を補強する位置づけで考えるのが実務的になる。
英語力は必要か
案件による。外資系企業のプロジェクトや、海外拠点への展開を含む案件では、ドキュメントが英語であったり、海外メンバーとのやり取りが発生したりする。必須ではないが、あると案件の幅が広がるという位置づけだ。英語学習の投資対効果の判断は転職にTOEICは何点必要かに書いた考え方が使える。
激務ではないのか
プロジェクトのフェーズによって波がある領域になる。特に導入直前や、稼働直後のトラブル対応の時期は負荷が上がる。逆に運用保守のフェーズは比較的落ち着く。だから面接では、担当する案件のフェーズと、繁忙期の実際の状況を確認する。「どのフェーズを担当するか」を聞かずに入ると、想定と違う負荷に当たることになるんよ。
よくある質問
SAPやERPの経験は転職で本当に有利ですか?
有利になりやすい。理由は希少性で、扱える人材が需要に対して足りていない。更新・刷新の案件が継続的に発生する点も大きい。
未経験からこの領域に入れますか?
直接は難しいが経路はある。業務側(経理・購買・生産管理)から導入プロジェクトに入る道と、IT側からERP案件に参画する道の2つだ。
この領域の経験はどう売ればいいですか?
製品名の羅列ではなく、業務領域×フェーズ×規模の3点で書く。この3点が揃うと採用側が自社の案件に当てはめられる。
経歴の書き方シートをLINEで無料配布中
業務領域・フェーズ・規模の3点で経歴を整理するシートを、公式LINEで無料配布している。希少性は、伝わって初めて値段になる。


