内定は嬉しい。ただ、提示された金額を見て一瞬だけ「もう少しどうにかならないか」と思ったはずだ。そして大半の人が、その一瞬を飲み込んで承諾のメールを送る。

私のDMには年収交渉についての相談が繰り返し届く。まとめるとこうだ。

「内定は出ましたが、提示された年収が想定より低いです。交渉したい気持ちはありますが、印象が悪くなって内定が取り消されたらと思うと言い出せません。そもそも何と言えばいいのかも分かりません」

届く相談の典型例として答える。先に結論を言う。交渉しなかった人は、その差額を在籍年数ぶん払い続けることになる。

交渉できるのは、内定後・承諾前の一瞬だけ

まず時期の話を潰しておく。年収交渉が成立する窓は、内定通知を受け取ってから、承諾の返事をするまでの間しかない。

選考の途中で金額の話を持ち出すと、「条件から入る人」という見え方をすることがある。逆に承諾した後は、あなたはもう社員で、交渉のカードは手元にない。この2つの間の数日間だけが、会社があなたを採りたいと思っていて、かつ条件がまだ確定していない期間だ。

そして知っておいてほしいのは、採用側は交渉されることを想定しているということだ。提示額には多くの場合、幅の中の位置がある。上限で出す会社は少ない。黙って承諾する人と、根拠を示して交渉する人で、同じポジションでも着地が変わるのはこのためだ。

交渉が通る人と、通らない人の違いは1つだけ

「図々しいと思われないか」という不安に答える。印象を悪くする交渉と、実務的な確認として扱われる交渉の違いは、根拠があるかどうか、それだけだ。

  • 通らない型 … 「もう少し上げてほしい」「生活があるので」。あなたの都合しか入っていない
  • 通る型 … 「現職の総支給が◯◯で、同職種の相場が◯◯。この経験で貢献できるので◯◯を希望したい」。相手が社内を説得するための材料になっている

採用担当は、あなたの希望を上に通す立場だ。つまりあなたが渡すべきなのは要求ではなく、担当者が社内で使える理由なんよ。ここを理解しているかどうかで、同じ金額を求めても結果が変わる。

交渉の前に、必ず用意する3つの数字

台本の前に、材料を揃える。この3つがないまま口を開くと、必ず押し切られる。

  1. 現職の正確な総支給額。基本給・賞与・各種手当を年額で。給与明細と源泉徴収票を見て出す
  2. 同職種・同年代の相場。市場価値の測定サービスや求人票の提示レンジから拾う
  3. 自分の希望額と、最低ライン。この2つを分けておく。最低ラインを決めていないと、その場の空気で妥協する

よくある質問

年収交渉はいつやるのが正解ですか?

内定が出た後、承諾の返事をする前だ。この一瞬しか交渉の余地はない。選考中に金額の話を持ち出すと評価に影響することがあり、承諾後は交渉のカードが消える。

年収交渉をすると印象が悪くなりませんか?

言い方次第だ。要求だけを並べると印象は悪くなるが、根拠と入社意思をセットで伝える形なら、実務的な確認として扱われる。むしろ黙って承諾する人の方が損をしている。

交渉しても上がらなかったらどうすればいいですか?

金額が動かなくても、入社時期・等級・次回の評価時期・手当といった別の条件が動くことがある。金額以外の交渉材料を持っておくことが重要だ。