内定の連絡が来た。条件の話になる。
「ご希望の年収はどのくらいですか」
ここで、多くの人が固まる。高く言って落とされるのが怖い。低く言うと後悔する。そして結局「御社の規定に従います」と答えてしまう。
先に断定する。金額は勘で決めるな。根拠から逆算しろ。根拠のない数字は、高くても低くても通らない。
この記事の要点
- 上げ幅の目安は、同職種で1割前後、条件が変わるなら2〜3割
- 数字より根拠が効く。根拠は3種類ある
- 根拠は1つに絞る。3つ並べると要求が重くなる
- 「規定に従います」は謙虚ではなく判断の放棄に見える
私のDMに繰り返し届く形
まとめるとこうだ。
「転職活動で内定が出て、希望年収を聞かれました。いまが450万で、正直もう少し欲しいのですが、いくらと言えばいいのか分かりません。高く言って内定が消えるのが怖くて、結局「御社の基準でお願いします」と答えてしまいました。後から考えると、あれで良かったのか分かりません」
「後から考えると、あれで良かったのか分からない」。
この後悔は、実際にかなり多い。そして取り返すのは次の転職まで持ち越しになる。その扱いは年収交渉をしないまま入社して後悔している人へに書いた。
だからこの記事では、次に同じ場面が来た時に使える、金額の作り方を書く。
根拠は3種類。強い順に並べる
金額を決める前に、根拠を決める。根拠が数字を決めるのであって、逆ではない。
根拠1(最強)。他社の提示額。
「他社から◯◯万円の提示をいただいています」
これが圧倒的に強い。理由は単純で、実在する数字だからだ。あなたの市場価値が、あなた以外の企業によって値付けされている。反論の余地がない。
ただし、嘘は絶対にやめておけ。書面の提示があるものだけを使う。エージェント経由なら、担当が把握しているので嘘は即座に分かる。
根拠2。市場の相場。
「同職種・同年代の相場を確認したところ、◯◯万円前後という数字でした」
他社提示がない場合の本命がこれになる。客観的な数字を持っていることが、そのまま準備の証明になる。
根拠3(最弱)。現職の年収。
「現職が◯◯万円ですので、同水準以上を希望します」
弱いが、下限の主張としては機能する。「下げてまで移る理由がない」という論理は成立するからだ。
この3つのうち、一番強いものを1つだけ使う。
根拠を1つに絞る理由
3つ全部並べたくなるが、やめた方がいい。
「他社から500万の提示があり、相場も500万前後で、現職も470万なので、520万を希望します」
これは交渉ではなく主張に見える。要求の重さだけが伝わり、相手が譲歩できる余地を潰してしまう。
根拠1つ、金額1つ。これが最も通る形だ。
「他社から500万円の提示をいただいており、御社でも同水準でご検討いただけますでしょうか」
短い。だから相手が動ける。
上げ幅の目安。パターン別に置く
根拠が決まったら、金額を決める。現職からの上げ幅の目安を書く。
| パターン | 上げ幅の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 同職種・同業界に移る | 0〜1割 | 評価軸が同じなので大きくは動かない |
| 同職種・別業界(伸びている業界へ) | 1〜3割 | 業界の給与水準ごと変わる |
| 職種を変える(隣接) | -1割〜1割 | 経験の一部しか持ち込めない |
| 完全未経験の職種へ | 下がる前提 | 育成コストが乗る |
| 管理職・専門性の帯が上がる | 2〜3割以上 | 職責の対価が変わる |
この表で自分の位置を確認してから、根拠と突き合わせる。
そして重要なのは、額面ではなく手取りで判断することだ。年収が上がっても、税と社会保険料の増加で手取りの伸びは緩やかになる。50万上がっても、手取りは35万程度しか増えないことがある。
この計算は手取り計算ツールで数分でできる。現年収と提示年収を並べて、月々の手取り差を見てから希望額を決めてほしい。
平均としてどのくらい上がるものなのかは転職で年収はいくら上がるのが普通かにまとめた。
相場の数字を、どこから取るか
根拠2(市場の相場)を使う場合、数字の出どころが要る。感覚では根拠にならない。
取り方は2つある。
1。診断型で目安を出す。数分で、同条件の層の相場が出る。
*クリックすると公式サイトが開く。設問に答えると、その場で結果が表示される。*
受けた後の流れ|① 設問に答える(数分) → ② その場で結果が表示される → ③ 結果だけ持ち帰ってもいい
2。エージェントに聞く。担当は実際の決定年収を知っている立場にいる。「私の経歴で、この職種だといくらの帯が現実的ですか」と聞けば、実データに基づいた答えが返る。
*クリックすると公式サイトが開く。登録は経歴の入力のみで、面談の日程はあとから調整できる。*
登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当から連絡が入り、面談の日程を決める → ③ 面談はオンラインか電話。年収の相場と交渉の相談ができる
エージェント経由の最大の利点は、交渉を代行してもらえることだ。自分の口で金額を言うのが苦手な人は、これだけで結果が変わる。
SaaS・IT・広告・人材・コンサルの経験者で、年収の帯ごと上げにいくなら、年収交渉の代行まで込みで動くハイクラス特化の窓口が合う。
*クリックすると公式サイトが開く。ハイクラス特化の転職支援で、無料で面談できる。*
登録後の流れ|① 簡易フォームで無料登録(数分) → ② 電話かWebで面談し、経歴と希望の帯を伝える → ③ 求人紹介から年収交渉の代行まで任せられる
眺めるだけなら、求人サイトで足りる。担当と話す気になった段階が、登録のタイミングだ。面談まで進んで初めて、このサービスの価値が出る。
こういう人には不要だ。すでに他社から書面の提示を持っている人。根拠1が最強なので、他の材料は要らない。
伝える時の台詞
金額と根拠が決まったら、伝え方は型がある。
「内定をいただき、ありがとうございます。ぜひ前向きに検討したいと考えております。
1点だけご相談で、他社から◯◯万円の提示をいただいておりまして、御社でも同水準でご検討いただくことは可能でしょうか」
要点は3つ。
- 先に受諾の意思を伝える。交渉は「行きたい前提」で成立する
- 金額を自分から出す。「もう少し上がりませんか」は最も動かない
- 根拠を1つ添える
そして、通らなかった場合の答えも用意しておく。
「承知しました。条件は理解しましたので、内容を含めて前向きに検討させていただきます」
通らなくても関係は壊れない。交渉して即座に内定が消えることは、この形ならまず起きない。台詞の完全版は年収交渉の台本にまとめた。
交渉できる窓は、数日しかない
最後に、時期の話を書く。
- 面接の序盤 … 早すぎる。金の話から入る人という印象だけが残る
- 内定の連絡が来た直後〜承諾するまで … ここが唯一の窓だ
- 承諾書を出した後 … 遅い。ここから動かすのはほぼ無理
つまり、内定の連絡から数日の間に全部が決まる。
だから、内定が出る前に金額と根拠を決めておく。その場で考えると、必ず「規定に従います」に流れる。
私も4回の転職のうち、最初の何回かは提示されるまま受けた。交渉という選択肢が頭になかった。後から知って悔しかったが、次の交渉で取り返した。
正直に言うと、いくらが適正だったのかは、いまでも分からない。通った金額が正解だったのか、もっと言えたのかは検証しようがない。この不確かさは残る。
それでも1つだけ確実なのは、言わなければ0だったということだ。数字を出したから、動いた。
3分で診断:市場価値タイプ診断——交渉の根拠になる、自分の売り物の型を8問で判定する。無料・登録不要。
いくらまで狙えるかの相場観は、業界と職種でほぼ決まる。年収700万を狙える業界と職種の職種別早見表で、自分の職種の天井を先に確認しておくと、希望額の根拠が作れる。
交渉の実際の場になるオファー面談で、何をどう聞くかはオファー面談で聞くことリストにまとめた。金額より先に根拠を出すのが通る形になる。
ここまでのまとめ
・上げ幅の目安は、同職種で1割前後、条件が変わるなら2〜3割
・数字より根拠が効く。根拠は3種類ある
・根拠は1つに絞る。3つ並べると要求が重くなる
2025年の賃上げ率(公的データ)
厚労省の賃金引上げ等の実態に関する調査(令和7年)では、賃金を引き上げた企業は91.5%、改定額は月1万3,601円・改定率4.4%で、5,000人以上は5.1%・100〜299人は3.6%、建設5.9%が最高で医療・福祉2.3%が最低、労働組合がある企業はない企業より0.8ポイント高かった。自分の昇給を規模と業界の平均と比べる手順は2025年の賃上げ率の記事で書いた。
都道府県別の平均給与(公的データ)
令和7年賃金構造基本統計調査の所定内給与は、東京418.3千円・神奈川368.6千円・大阪348.9千円・愛知341.6千円の4都府県だけが全国平均340.6千円を超え、年収の目安は東京678万から青森401万まで1.7倍の差がある。差は産業・企業規模・賞与で生まれ、同じ職種と規模なら縮まる。47都道府県の一覧は都道府県別の平均給与・年収ランキングのデータ記事で書いた。
職種別の平均年収(公的データ)
令和7年賃金構造基本統計調査の145職種の年収の目安は、営業661万・ソフトウェア作成者578万・総合事務員541万・看護師525万・大型トラック運転者507万・介護職員388万・販売店員385万と、同じ会社員でも2倍近く開く。差は賞与で生まれ、未経験から上げるなら営業・情報処理・資格職に移る。全職種の一覧は職種別の平均年収ランキングのデータ記事で書いた。
職種別・年代別の年収(公的データ)
令和7年賃金構造基本統計調査の年齢別の所定内給与は、25〜29歳では職種の差が小さいが、営業・企画・技術者・システムは45〜49歳で1.5〜1.7倍に伸び、介護・販売・運転・調理は1.2倍前後で止まる。年収の目安は45〜49歳で営業745万と介護414万のように2倍近く開く。24職種の年代別の表は職種別・年代別の平均年収のデータ記事で書いた。
通勤手当の税金と社会保険料
通勤手当は公共交通機関なら月15万まで、マイカーは距離別(2〜10kmで4,200円〜55km以上31,600円)まで非課税で年収の額面に入らないが、社会保険料の計算には全額含まれる。転職で通勤手当がない会社は通勤費を引いて手取りで比べ、残業代の単価には含まれない。上限の表は通勤手当は課税されるのかの記事で書いた。
社宅と家賃補助の手取りの違い
家賃補助・住宅手当は全額が税と社会保険料の対象で月3万の手取りは約2.3万、借上げ社宅は賃料相当額の50%以上を本人が払えば会社負担分が非課税で保険料の対象にもならず、家賃8万の例で年20〜30万の差になる。社宅は標準報酬が下がり、退職で出る点があり、転職では住宅手当を引いて手取りで比べる。計算は社宅と家賃補助はどちらが得かの記事で書いた。
労働条件通知書のどこを見るか
契約として効くのは求人票でなく労働条件通知書で、2024年4月から就業場所と業務の変更の範囲・更新上限・無期転換の明示が加わった。基本給と固定残業代の内訳、転勤の範囲、年間休日など10項目を承諾前に確認し、求人票と違えば入社後でも即時解除できる。チェックの一覧は労働条件通知書のどこを見るかの記事で書いた。
他社の内定を嘘で使うと、どうなるか
交渉の材料に「他社から◯万円の提示がある」と言いたくなる。本当ならいい。嘘なら、やめておく。
| 嘘の種類 | 起きること |
|---|---|
| 存在しない他社の内定額を言う | 企業が「その額なら見送ります」と言った瞬間に、戻る場所がなくなる |
| 現年収を多めに言う | 入社後に源泉徴収票や前職の給与明細で分かる。故意なら内定取り消しや懲戒の理由になり得る |
| 他社の選考状況を盛る | 企業は他社の内定の有無を確認できないが、矛盾が出ると信用を失う |
大手の転職メディアの解説も、交渉そのもので内定が取り消されることはないが、経歴や年収を偽った場合は入社後でも法的な問題になると揃って書いている。交渉の根拠は、嘘の他社内定でなく、市場の相場と自分の実績で足りる。他社の内定が本当にあるなら、額は言わず「他社と比較検討している」とだけ伝えるのが、最も安全で最も効く。
給料が上がらないなら給料が上がらない会社は辞めるべきか。判断基準3つだ。
基本給と手当の割合で損をする仕組みは基本給が低くて手当が多い会社のデメリットだ。
派遣の時給を上げるなら派遣の時給交渉の言い方と相場だ。
登録販売者の側の年収の仕組みは登録販売者の転職と年収。管理者要件で決まるだ。
リモートと年収の関係はフルリモートで年収が下がる理由と下げずに取る方法だ。
条件を出して引き止められた時の判断はカウンターオファーは受けるべきかだ。
よくある質問
年収交渉ではいくら上乗せして提示すべきですか?
同職種・同業界なら1割前後、業界や職種が変わって評価が上がるなら2〜3割が現実的だ。ただし幅より根拠が重要で、根拠のある1割の方が根拠のない2割より通る。
希望年収を聞かれたら、どう答えるのが正解ですか?
先に受諾の意思を伝え、具体的な数字を1つと根拠を1つ添える。「御社の規定に従います」は判断の放棄と受け取られることがある。
根拠は複数用意した方がいいですか?
1つに絞る方が通る。強い順に他社の提示額、市場の相場、現職の年収。3つ並べると要求が重くなり、交渉ではなく主張になる。
年収の資料をLINEで無料配布中
年収交渉の台本と市場価値の測り方シートをLINEで無料配布している。金額を決めるのは勇気ではなく、根拠だ。




