有給を申請したら、「人がいないから無理」と言われた。周りも取っていない。取れないのが当たり前の職場で、自分だけ言い出せない。これは仕方ないのか。

先に言う。人手不足は、拒否の理由にならない。会社にあるのは時季変更権だけで、その要件も人手不足では満たさない。法律の線、会社の義務、拒否された時の手順を書く。

先に一文で。人手不足を理由に有給を取らせないのは違法で、会社にあるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に別の日を求める時季変更権だけなので、書面で申請して記録を残し、社内で通らなければ労働基準監督署に相談し、退職が決まっているなら会社は拒否できないので退職日までに消化するのが正解だ。

この記事の要点

  • 有給は労働者の権利。会社にあるのは時季変更権だけで、拒否権はない
  • 時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」限定。単なる人手不足は該当しない
  • 年10日以上ある人に年5日取らせるのは会社の義務。違反は罰則の対象
  • 拒否されたら、書面で申請→社内→労基署。退職前なら会社は拒否できない

法律の整理。権利と時季変更権

中身
労働者の権利有給休暇を、自分が指定した日に取る(労働基準法39条)
会社の権利時季変更権。その日に取られると「事業の正常な運営を妨げる」場合に、別の日を求められる
会社にない権利取得そのものを拒否する権利
時季変更権の要件代替要員の確保が困難など、具体的な支障。単なる人手不足・繁忙は該当しない(厚生労働省の解釈)

「人がいないから無理」は、時季変更権の行使ですらない。代わりの日を示さず、取得自体を断っているなら、それは拒否で、違法だ。

年5日の取得義務。会社の側に罰則がある

2019年4月から、年10日以上の有給が付与される労働者について、会社は年5日を確実に取得させる義務がある。労働者が申請しない場合でも、会社が時季を指定して取らせなければならない。違反すると、会社は労働者1人あたり30万円以下の罰金の対象になる。

「うちは有給は年5日まで」と言う会社があるが、逆だ。5日は取らせなければならない下限で、上限ではない。付与日数の目安は有給は何日もらえるかへ。

拒否された時の手順。3段階

1、書面(メール)で申請する。口頭だと「聞いていない」で終わる。「◯月◯日に年次有給休暇を取得します」と送る。理由は書かなくていい。有給に理由は要らない。

2、拒否されたら、時季変更権の理由を聞く。「事業の正常な運営を妨げる具体的な理由と、代わりの日を教えてください」と文面で返す。ここで具体的な理由が出なければ、拒否が違法である記録になる。

3、社内で通らなければ、労働基準監督署へ。申請と拒否のやり取り(メール)を持って相談する。労基署は会社に是正の指導ができる。相談の流れは労働基準監督署に相談するとどうなるかに書いた。

3段階目まで行く前に、大半は2段階目で通る。文面で理由を求められると、会社は拒否を続けにくい。

退職が決まっているなら、会社は拒否できない

退職日が決まった人には、時季変更権が使えない。変更する先の日がないからだ。退職日までの残りの有給は、会社が拒否できない。人手不足で辞めさせてもらえない場合の切り方は人手不足を理由に退職を引き止められた時へ。シフト制の職場での消化の数え方はシフト制の退職時の有給消化に書いた。

消化しきれない分は、退職時に限り会社が買い取ることが認められている。ただし義務ではなく、会社が応じなければ消える。

取れない職場に居続けるか

有給が取れない職場は、残業代や休日の運用も雑なことが多い。年5日の義務すら守られていない会社は、法令遵守の意識が低い。取れるようにする交渉と、取れる職場に移る準備を、並行して進める。辞めるコストは先に数字にする。

3分で診断辞めるコスト診断——残っている有給の日数と金額、辞めた場合の失業保険を先に数字にする。

休日出勤を断りたいなら休日出勤は断れるか。断れる条件と言い方だ。

よくある質問

有給の申請に理由は必要ですか?

要らない。理由を聞かれても答える義務はなく、「私用のため」で足りる。理由で可否を判断するのは、それ自体が問題だ。

有給を取ったら評価を下げると言われました

違法だ。有給の取得を理由にした不利益な扱い(賞与の減額・評価の引き下げ)は禁止されている。発言の記録を残し、労基署に相談する。

パートやアルバイトにも有給はありますか?

ある。週1日でも、6ヶ月継続して8割以上出勤していれば、所定労働日数に応じた日数が付与される。人手不足を理由に取らせない扱いは、正社員と同じく違法だ。

出典(一次資料)

  • 厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」(年5日の確実な取得)
  • 厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」(時季変更権の考え方)
  • 労働基準法第39条(年次有給休暇)

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