給与明細を見て、電卓を叩いて、ため息が出た。昇給、月3,000円。年収にして3万6,000円。頑張った1年の値段がこれか。

その脱力に、数字で答える。あなたの会社が特別渋いとは限らない。だが、その昇給幅のまま望む年収に届かないのも、また事実だ。現実の相場、確認すべきこと、そして昇給以外の道。順番に書く。

この記事の要点

  • 平均昇給は月数千円の水準。数千円は残念ながら標準の範囲だ
  • 少なさの原因がテーブルか評価かを、先に切り分ける
  • 社内交渉で動く幅と、転職で動く幅は桁が違う
  • 昇給を待つ年数と、移動で縮む年数を比べてから決める

相場の話。昇給は月数千円の世界だ

まず、世間の昇給がどの程度なのかから。厚生労働省の賃金引上げ等の実態調査などで見る1人あたりの平均賃金の改定額は、月数千円〜1万円弱の水準で長く推移してきた。近年は賃上げの流れで上向いたとはいえ、月5,000円の昇給なら年収ベースで6万円の上昇にすぎない。

この数字が意味することは重い。年収を100万円上げたい人が昇給だけでそこに向かうと、10年以上かかる計算になる。あなたの脱力は正しい感覚で、昇給という仕組みは、そもそも年収を大きく動かすために作られていない。定期昇給は現状維持の微調整であって、飛躍の装置ではないんよ。

確認1。テーブルの問題か、評価の問題か

とはいえ、諦める前に切り分けるべきことが3つある。1つ目は、少なさの原因がどこにあるかだ。

昇給額は、おおまかに「会社の昇給テーブル×あなたの評価」で決まる。だから原因は2系統に分かれる。

  • テーブルが小さい。最高評価でも月5,000円しか上がらない制度なら、あなたがどれだけ頑張っても天井はそこだ。これは会社の仕様の問題になる
  • 評価が伸びていない。テーブルは十分なのに、あなたの査定が標準止まり。これは実績の見せ方と交渉の問題になる

見分け方は、同僚・先輩の昇給幅との比較と、就業規則・賃金規程の等級表の確認だ。聞きにくければ、課長級・部長級の人がいくらもらっていそうかを観察するだけでも、この会社の天井の低さはおおよそ見える。10年上の先輩の生活水準が今のあなたと大差ないなら、テーブルが答えを言っている。

確認2。社内で動かせる幅を、一度は試す

原因が評価側にあるなら、社内交渉の余地はある。やることは2つだ。

実績の数字化。査定面談の前に、この1年で変えたこと・数字・引き受けた範囲の拡大を1枚にまとめる。評価者はあなたの仕事を半分も見ていない。見せていない実績は、なかった実績と同じ扱いになるのが査定の現実だ。

基準を聞く交渉。「来期、最高評価を取るには何ができているべきですか」と、上司に基準を先に聞く。この質問は昇給をねだる形ではなく、基準に向かって動く形だから角が立たず、しかも1年後の交渉の土台になる。交渉の組み立ての詳細は年収交渉の台本の考え方が社内でもそのまま使える。

ただし、期待値は正直に言っておく。社内交渉で動くのは、テーブルの範囲内の数千円〜数万円だ。それ自体に意味はあるが、次の確認と比べる必要がある。

確認3。転職で動く幅と比べる

3つ目の確認が、この記事の本丸だ。あなたの市場価値と現在の年収の差を測る。

転職で年収が動く場合、隣接領域への移動で50〜100万円動くことは珍しくない(転職で年収はいくら上がるのかに構成要素を書いた)。月3,000円の昇給を17年分、一度の移動で取る計算になる。もちろん全員が上がるわけではないが、上がるかどうかは、測れば事前に分かる。

*クリックすると公式サイトが開く。経歴を入力すると、その場で想定年収の目安とスカウトの可否が表示される。*

受けた後の流れ|① 経歴を入力する(10分前後) → ② その場で結果が表示される → ③ 経歴を置いておけばスカウトが届く

ミイダスで市場との差を測る

*クリックすると公式サイトが開く。設問に答えると、その場で適正年収の目安が表示される。*

受けた後の流れ|① 設問に答える(数分) → ② その場で結果が表示される → ③ 結果だけ持ち帰ってもいい

タレントスクエアの年収診断で適正額を見る

測った結果、いまの年収が市場と釣り合っているなら、この会社の昇給の少なさは市場全体の話で、動いても大きくは変わらない。逆に市場価値との差が大きいなら、あなたは毎年、その差額を会社に寄付しながら働いていることになる。どちらなのかを知らないまま、来年も3,000円の昇給を待つのが、一番もったいない。

昇給を待つ年数と、移動の年数の比較表

最後に、判断を1つの比較に落とす。

手段動く幅の目安かかる時間
定期昇給を待つ年数万円毎年少しずつ。100万の差は10年以上
社内で評価を上げるテーブル内の上乗せ1〜2査定期。上限はテーブルまで
昇格する役職手当分の上昇会社のポスト次第。自分では選べない
隣接領域へ転職する50〜100万動く例が珍しくない準備込みで3〜6ヶ月
業界ごと移る(軸ずらし)給与水準ごと変わる半年〜。組み方はこちら

どれが正解かは、あなたの現在地と市場の差で決まる。ただ1つ確かなのは、比較せずに昇給だけを待つのは、選択ではなく放置だということだ。まず測る。数字が出てから、待つか動くかを決めればいい。

あわせて検索される疑問に、先に答えておく

昇給なしは違法ではないのか

違法ではない。昇給は法律上の義務ではなく、会社の賃金制度の問題だ(就業規則に昇給の定めがある場合、その運用義務は生じ得る)。最低賃金を下回らない限り、昇給ゼロが続いても法律は助けてくれない。だからこそ、昇給の少なさへの対抗手段は権利の主張ではなく、市場価値の測定と移動の検討という実利の側にある。

賞与は増えているが昇給がない。これはどう見るべきか

賞与での還元は、会社にとって都合のいい形だと知っておく。賞与は業績次第で減らせるが、基本給は一度上げると下げにくい。つまり賞与厚め・昇給薄めの会社は、あなたへの支払いを可逆的な形に寄せている。基本給は、残業代・賞与・退職金の算定基礎でもある。同じ年収なら、基本給の厚い方が構成として強い——この視点で自分の給与明細を見直してほしい。

よくある質問

昇給は年いくらくらいが普通ですか?

平均は月数千円〜1万円弱の水準だ。月5,000円なら年収で6万円。数千円の昇給は標準の範囲で、だからこそ昇給頼みの年収計画には限界がある。

昇給が少ないのは自分の評価が低いからでしょうか?

テーブルの問題か評価の問題かを切り分ける。テーブルが小さいなら努力の場所を変えるべきで、評価の問題なら実績の数字化と基準を聞く交渉で動く余地がある。

昇給交渉はして意味がありますか?

テーブルの範囲内では意味がある。ただし交渉で動く幅と転職で動く幅は桁が違うことが多い。市場価値を測ってから、どちらに時間を使うか決めるべきだ。

年収の作戦はLINEで。市場価値と年収の資料を無料配布中

昇給・交渉・転職の比較シートをまとめた資料を、公式LINEで無料配布している。3,000円の昇給を待つ前に、差額を測ってほしい。

LINEで無料の資料を受け取る