副業を始めたい。就業規則を読むと「許可制」とある。申請すれば通るのか、断られるのか、断られたら終わりなのか。何を書けば通るのかが分からず、申請せずに始めるか迷っている。

会社が断れる理由は4つしかない。会社が副業を断れる理由は4つだけ。申請書はその4つを潰して書く。就業規則の3パターンと、申請書の5項目と例文、断られた時と無断で始めた時を書く。

先に一文で。副業の許可申請は、就業規則が禁止・許可制・届出制のどれかを確認し、会社が制限できる理由(労務提供上の支障・秘密漏洩・信用毀損・競業)の4つに当たらないことを、内容・契約形態・時間・本業への影響なし・競業なしの5項目で書き、業務委託や自分の事業のほうが雇用より通りやすく、断られたら4つのどれかを確認し、無断で始めた場合の処分は実害の有無で決まる。

この記事の要点

  • 就業規則の3パターン|禁止・許可制・届出制。モデル就業規則は届出制
  • 会社が制限できる理由は4つ|労働時間・秘密漏洩・信用毀損・競業
  • 申請書の5項目|内容・契約形態・時間と曜日・本業への影響なし・競業なし
  • 雇用の副業は通りにくい。業務委託や自分の事業で申請する

まず就業規則を確認する

パターン規則の書き方動き方
禁止「会社の許可なく他の業務に従事してはならない」で、許可の規定がない一律禁止は判例上無効になりやすい。人事に許可の運用があるか聞く
許可制「副業を行う場合は事前に会社の許可を得る」申請書を出す。この記事の対象
届出制「副業を行う場合は事前に届け出る」届出書を出す。原則自由で、会社は4つの理由がある時だけ制限できる

厚生労働省のモデル就業規則(2018年改定)は届出制で、会社が禁止・制限できるのは、①労務提供上の支障、②企業秘密の漏洩、③名誉・信用を損なう行為、④競業により利益を害する場合、の4つとされている。

申請書の5項目(4つの理由を潰す)

項目書くこと対応する理由
1 副業の内容何をするか具体的に。「Webデザインの受託」「ブログ運営」「動画編集」競業・信用
2 相手先と契約形態業務委託か雇用か。自分の事業なら屋号・開業の有無労働時間の通算(雇用のみ)
3 時間と曜日「平日退勤後21〜23時、土曜午前。月30時間以内」労務提供上の支障
4 本業への影響なし勤務時間中は行わない、健康管理と繁忙期の調整、成果に影響させない労務提供上の支障
5 競業・情報漏洩なし同業・同顧客・同商材を扱わない、会社の情報・設備・名刺・肩書きを使わない秘密漏洩・競業

加えて、副業の収入は自分で確定申告し、住民税は自分で納付すると書くと、経理の懸念(給与計算の手間)が減る(副業の確定申告はいくらからかの記事)。

例文(業務委託・自分の事業の場合)

「副業(兼業)許可申請書

  1. 副業の内容|個人としてWebサイトのデザイン制作を請け負う(業務委託)。クラウドソーシングおよび知人からの紹介案件。
  2. 契約形態|業務委託契約(雇用契約ではありません)。個人事業として開業届を提出予定。
  3. 実施時間|平日の退勤後(21時〜23時)および土曜午前。月合計30時間以内。
  4. 本業への影響|勤務時間中および会社の設備・情報を使用した作業は一切行いません。健康管理に留意し、繁忙期は副業の受注を調整します。本業の成果・勤怠に影響を出しません。
  5. 競業・機密|当社の事業領域・取引先・商材と重複する案件は受けません。当社の名称・肩書き・名刺・機密情報を使用しません。
  6. 税務|副業収入は自身で確定申告し、住民税は普通徴収(自分で納付)を選択します。

以上、就業規則第◯条に基づき申請いたします。」

雇用(アルバイト)で申請する場合は、2に「雇用契約、週◯時間、従業員数◯人の事業所」と書き、週20時間未満で社会保険の加入要件に当たらないことを添える(副業のアルバイトで社会保険はどうなるかの記事)。

通りやすい副業と通りにくい副業

通りやすい通りにくい
業務委託・自分の事業(ブログ・SNS・クラウドソーシング・制作の受託)雇用のアルバイト(労働時間の通算・割増賃金・社会保険の問題が出る)
本業と業界・顧客が離れている同業・同顧客・同商材(競業)
月30時間以内、深夜と休日の一部深夜のシフト、週20時間以上
実名や会社名を出さない会社名や肩書きを使う発信

私は会社員の時、副業をブログとSNSで始めた。給与でなく業務委託と広告収入で、本業のWeb業界とは扱う内容を分けた。時間と競業の2つを最初に決めておいたので、会社に説明する時も同じ言葉で済んだ。始め方の全体は副業の完全ガイドの記事、時間がない人の始め方は副業する時間がない時の記事で書いた。

断られた時

  1. 理由を聞く。4つのどれに当たるかを文書で確認する
  2. 労働時間が理由なら、時間を減らして再申請。競業が理由なら、業種を変えて再申請
  3. 「規則で一律禁止だから」だけなら、就業時間外の行動は本来自由で制限には合理的理由が要る、という判例の考え方を伝える
  4. それでも通らないなら、始めるか、転職するかを決める。副業可の会社は増えている(副業とフリーランスの割合のデータ記事

申請せずに始めた時のリスク

状況処分
無断だが実害なし(本業に支障なし・競業なし・情報漏洩なし)手続き違反として注意・軽い処分にとどまる。解雇は無効とされた判例が多い
深夜のアルバイトで遅刻・居眠りが続いた労務提供上の支障で懲戒の対象
競合他社で働いた、会社の顧客や情報を使った重い懲戒・解雇が有効になり得る
公務員法律で許可が必要。無断は明確な処分対象

伝わる経路は住民税と社会保険の届出の2つで、給与の副業は住民税の合算で伝わりやすい(副業が住民税でバレる仕組みの記事)。呼び出された時の対応は副業がバレて呼び出された時の記事で書いた。始めるなら、実害を出さない形(業務委託・時間の上限・競業なし)にしておけば、バレた時の処分は軽い

よくある誤解

「就業規則で禁止なら副業はできない」。一律禁止の規定は判例上無効になりやすい。会社が制限できるのは4つの理由がある時だけだ。

「申請書は詳しく書かないほうがいい」。逆だ。時間・契約形態・競業なしを具体的に書くほど、会社は断る理由を失う。

よくある質問

開業届を出すと会社に伝わりますか?

税務署から会社に通知は行かない。伝わる経路は住民税と社会保険の届出で、開業届自体では伝わらない(会社員が開業届を出すとバレるかの記事)。

許可された後に副業の内容が変わったら?

内容・時間・契約形態が変わる時は変更の届出を出す。許可の範囲外の副業は無断と同じ扱いになる。

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