「頑張っていればいずれ正社員に」。その言葉を初めて聞いた日から、何回目の契約更新を迎えただろうか。
私のDMには契約社員として働く人からの相談が繰り返し届く。まとめるとこうだ。
「契約社員として働いています。入社時に正社員登用制度があると聞いていて、上司にも頑張り次第だと言われ続けています。でも何年経っても話が具体的になりません。同じ仕事をしているのに給与も賞与も正社員と違います。このまま待っていていいのか分かりません」
届く相談の典型例として答える。先に結論を言う。制度があることと、制度が動いていることは、まったく別の話だ。
- 登用制度の実効性は、過去の登用実績でしか測れない
- 「頑張り次第」は評価基準ではない。基準がないなら、それが答えだ
- 5年ルールは正社員になる制度ではない
- 待つより、正社員求人に応募する方が早い場合が多い
登用制度が動いているかを検証する3つの質問
まず、いまの会社の制度を検証する。感情ではなく事実で確かめるために、次の3つを聞け。これは聞いていい質問だ。
- 過去3年で、何人が契約社員から正社員になりましたか
- 登用の基準と、選考の時期はいつですか
- 自分がいま、その基準のどこに足りていませんか
この3つに具体的な数字と条件で答えられる会社なら、制度は動いている。あとは基準を満たしにいけばいい。
問題は、答えが曖昧に流された場合だ。「タイミング次第」「上の判断で」「実績を積んでもらえれば」。これらは全部、基準がないという意味の言い換えになっている。基準のない選考は、いつまで経っても通らない。あなたの努力の量とは関係なく、そもそも判定が行われていないからだ。
そして残酷な事実を1つ。登用制度は、人を安く長く使うための引き止め装置として機能してしまうことがある。制度の存在を示すだけで、契約社員は辞めずに頑張り続ける。会社は正社員の人件費を払わずに、正社員並みの働きを得る。この構図に何年もいるのは、単純に損だ。
待ち続けることのコストを数える
「もう少し待ってみる」の代金を計算しておこう。
- 賞与と退職金の差。同じ仕事をしていても、年間の総額でまとまった差がつく。それが待った年数分だけ積み上がる
- 昇給テーブルの不在。契約社員の時給や月給は、上がっても小幅で止まりやすい
- 社会的信用。住宅ローンや各種審査で、雇用形態が影響する場面がある
- 年齢。正社員の未経験枠は年齢とともに狭まる。待っている間に、外で正社員になる難易度が上がっていく
最後の項目が一番重い。20代のうちなら未経験可の正社員求人が広く開いているが、その扉は年々狭くなる。社内で待ち続けた3年と、外で正社員になった3年では、5年後の景色がまるで違う。
「5年働けば正社員」は誤解だ
ここで、よくある誤解を潰しておく。
労働契約法には無期転換ルールがあり、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込むことができる。ただし、これは無期契約になる制度であって、正社員になる制度ではない。
つまり、契約期間の定めがなくなるだけで、給与も賞与も契約社員のままという場合があり得る。雇い止めの不安は減るが、待遇の差はそのまま残る可能性がある。この違いを理解しないまま5年待つと、期待した結果と違うものが手元に残る。
制度の名前だけで判断せず、自分の会社で無期転換した人がどういう待遇になっているかを確認してほしい。
外に出て正社員になる方が早い、という現実
検証の結果、登用が動いていないと分かったなら。社内で待つより、外で正社員になる方が確実に早い。
契約社員として積んだ経験は、無駄になっていない。同じ職種の正社員求人にとって、あなたは実務経験者だ。未経験者と競争するわけではないから、条件はむしろ良い。
- 同職種の正社員求人に応募する。実務経験がそのまま武器になる
- 未経験の職種でも、20代なら正社員のポテンシャル枠が広い
- 契約社員として身につけた業務は、翻訳して職務経歴書に書く
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在職のまま動くなら、まず自分の市場価値を測っておくといい。ミイダスは10分・無料で、いまの経歴にどんな企業からの需要があるかが見える。登用を待つべきか外に出るべきかの判断は、外の相場を知ってからの方が正確になる。
私自身、フリーター期間を経て未経験でWeb業界の正社員になった。当時の自分にあったのは実績でも資格でもなく、「このまま待っていても何も変わらない」という判断だけだった。動いた先で経験を積み、次の転職で大手系企業のUIデザイナーになり、2年後にディレクターへ上がった。待っている時間が実績になる会社と、ならない会社がある。あなたの会社がどちらかは、さっきの3つの質問で分かる。
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よくある質問
正社員登用制度があるのに登用されないのはなぜですか?
制度の存在と運用は別だからだ。求人票に書かれていても、実際の登用実績がゼロに近い会社は珍しくない。過去に何人が登用されたかという実績を確認するのが唯一の検証方法だ。
5年働けば正社員になれるのですか?
ならない。労働契約法の無期転換ルールは、有期契約が通算5年を超えた場合に無期契約へ転換を申し込める仕組みで、正社員になる制度ではない。待遇が契約社員のまま無期になる場合もある。
契約社員から正社員に転職できますか?
できる。特に20代なら未経験可の正社員求人は多い。契約社員として積んだ実務経験は、同職種の正社員求人でそのまま評価対象になる。
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