上司から「処分になる」と言われた。始末書を出せとも言われている。それがどれくらい重いのか、給料がいくら減るのか、転職に響くのかが分からないまま、判子を押しそうになっている。
まず重さを知る。減給は上限がある。1回で平均賃金の半日分までだ。6段階の重さと、覆せる条件と、始末書の書き方を書く。
先に一文で。懲戒処分はけん責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇の6段階で、減給は労基法91条により1回が平均賃金の1日分の半額まで・総額が賃金支払期の賃金総額の10分の1までと決まっており、処分が有効になるには就業規則の定めと周知・事由該当・相当性・手続の公正が要る。
この記事の要点
- 重さは6段階|けん責 → 減給 → 出勤停止 → 降格 → 諭旨解雇 → 懲戒解雇
- 減給には法律の上限(労基法91条)|1回=平均賃金1日分の半額、総額=賃金総額の10分の1
- 有効になる4条件|就業規則の定めと周知/事由該当/相当性/手続の公正
- 始末書は事実の報告に絞る。争う事実を認める書き方をしない
- 転職に響くのは懲戒解雇だけ
6段階の重さ
| # | 処分 | 賃金への影響 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | けん責(戒告・譴責) | なし | 始末書の提出を伴うことが多い |
| 2 | 減給 | 法律の上限あり(下記) | 91条を超える減給は違法 |
| 3 | 出勤停止(懲戒休職) | その期間の賃金なし | 7〜14日程度が一般的 |
| 4 | 降格 | 役職手当が消える | 減給の制限の対象外とされる |
| 5 | 諭旨解雇(諭旨退職) | 退職 | 応じれば退職金が一部出ることが多い |
| 6 | 懲戒解雇 | 退職 | 退職金の減額・不支給の規定を置く会社が多い |
減給の上限(労働基準法91条)
| 制限 | 中身 |
|---|---|
| 1回の額 | 平均賃金の1日分の半額を超えてはならない |
| 総額 | 一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない |
例:月給30万円で平均賃金の1日分が1万円の場合
- 1回の減給は5,000円まで
- その月の減給の合計は3万円まで
これを超える減給は違法だ。給与明細で控除の中身を確認する(給与明細の見方と控除の記事)。なお、降格による役職手当の消失は減給の制限の対象外とされるので、実質的な減収はこちらのほうが大きくなることがある。
有効になる4つの条件
| # | 条件 | 見るところ |
|---|---|---|
| 1 | 就業規則に懲戒の種類と事由が定められ、周知されている | 就業規則にない理由では処分できない |
| 2 | 実際にその事由に当たる | 事実関係 |
| 3 | 相当性(処分が重すぎない) | 過去の同種の行為への処分、他の社員との均衡 |
| 4 | 手続の公正 | 弁明の機会があったか。懲戒委員会の定めを踏んでいるか |
これらを欠くと、懲戒権の濫用として無効になりうる(労働契約法15条)。
争う場合に集めるもの
- 処分の通知書(口頭だけなら、内容をメールで確認して記録に残す)
- 就業規則の該当条文(周知されているかも含めて)
- 事実関係の記録(日時、やりとり、証言)
- 弁明の機会があったかの経緯
出す先は、社内の異議申立て → 労働組合 → 都道府県労働局の総合労働相談コーナー・あっせん → 労働審判、の順で検討する。労基法違反(減給の上限超え)なら労働基準監督署が動く(残業代が出ないのは違法の記事)。
始末書の書き方
| 書く | 書かない |
|---|---|
| いつ、何が起きたかの事実 | 争う可能性がある事実を認める表現 |
| 再発防止の手順(具体的に) | 感情的な謝罪の羅列 |
| 影響の範囲 | 他人の責任への言及 |
事実を報告する部分は業務命令として提出を求められるが、反省や謝罪の意思表示まで強制できるかは争いがある。だから、事実と再発防止に絞って書く。ここで「すべて私の責任です」と書くと、後で争う時に不利な材料になる。
懲戒解雇の場合
| 論点 | 中身 |
|---|---|
| 解雇予告 | 即時解雇するには、労働基準監督署長の解雇予告除外認定が要る(解雇予告手当の記事) |
| 退職金 | 減額・不支給の規定を置く会社が多いが、全額不支給が常に認められるわけではない |
| 失業保険 | 重責解雇は給付制限がつく(会社都合と自己都合の違いの記事) |
| 離職票 | 離職理由に異議があればハローワークで申し立てる |
転職への影響
懲戒解雇以外は、ほぼ影響しない。
- 履歴書・職務経歴書に社内の処分歴を書く義務はない
- 在職中の処分が次の会社に伝わる仕組みもない
- 面接で聞かれることもまずない
懲戒解雇の場合は、退職理由として説明が要る場面が出る(面接での退職理由の例文の記事)。
私の場合
私は1社目が美容業界のブラック企業で、残業代なし・休日出勤・パワハラが当たり前の会社だった。あの頃は、就業規則を見たこともなかったし、処分の重さに上限があることも知らなかった。知らないと、言われたことが全部正しく見える。就業規則を1度読むだけで、言われていることが規程どおりなのかが分かる。読める場所にないなら、それ自体が周知されていない証拠になる(労働条件通知書の見方の記事)。
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よくある誤解
「減給は会社が自由に決められる」。労基法91条で上限がある。1回は平均賃金の1日分の半額まで。
「始末書は言われたとおり書くしかない」。事実の報告に絞れる。争う事実を認める必要はない。
会社の不正を通報して守られるのか
公益通報者保護法は通報先を①事業者(内部通報)②行政機関③報道機関等に分けて保護の条件を変えており、内部通報は「不正があると思料すること」で足りる。2026年12月1日施行の令和7年改正で、通報後1年以内の解雇・懲戒は公益通報を理由とすると推定され(立証責任の転換)、通報を理由の解雇・懲戒には直罰(法人は3,000万円以下の罰金)、フリーランスも保護の対象に入る。中身は会社の不正を通報して守られるのかの記事で書いた。
よくある質問
同じ件で何度も処分されることはありますか?
同じ行為に対して2回処分するのは、二重処分として無効になりうる。処分の通知書に対象の行為が特定されているかを確認する。
処分を理由に自分から辞めたほうがいいですか?
急がない。自己都合で辞めると失業保険の給付制限がつく。処分が不当なら争い、辞めるとしても離職理由を確認してからにする。
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処分の種類・就業規則の条文・弁明の機会の有無を並べて、有効性を4条件で判定する記入表を公式LINEで無料配布している。まず重さを知ろう。


