前の会社から声をかけられた。あるいは、辞めた会社のほうが良かったと今になって思う。でも、一度辞めた人間が戻るのは格好悪い気もするし、また同じことになる気もする。
判断の軸は1つだ。辞めた理由が消えていないなら、戻っても同じことが起きる。増えている理由と、確認する5つを書く。
先に一文で。出戻り(アルムナイ採用)は採用コストの低さ・人手不足・外での経験の持ち帰りという企業側の理由で増えているが、失敗するのは辞めた理由が解決していないまま戻る場合で、確認するのは雇用形態と等級・給与・配属先と上司・辞めた理由の現状・勤続年数の通算の5つだ。
この記事の要点
- 企業が受け入れる理由|採用コストが低い/人手不足/外の経験の持ち帰り
- 失敗の共通点は辞めた理由が解決していないまま戻ること
- 確認する5つ|等級/給与/配属と上司/辞めた理由の現状/勤続年数の通算
- 勤続年数が通算されないと、退職金も有給も一から
- 口頭でなく書面(労働条件通知書)で受け取る
企業が受け入れる3つの理由
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 採用コストが低い | 教育が要らない。カルチャーのミスマッチで早期に辞めるリスクが小さい。エージェント経由なら理論年収の30〜35%の手数料がかかるが、出戻りは不要 |
| 人手不足 | 求人を出しても応募が来ない。辞めた人に声をかけるのが最も確実 |
| 外の経験の持ち帰り | 他社のやり方、業界の相場、新しい技術 |
企業から見れば、安く経験を買えるのが出戻りだ。だからこそ、条件の交渉ではこちらが持っているものを言語化する必要がある。
働く側の利点と不利な点
| 利点 | 不利な点 |
|---|---|
| 環境が分かっているので立ち上がりが早い | 一度辞めた人という見られ方が残る職場がある |
| 外で上げた市場価値を条件に反映できる可能性 | 辞めた時と同じ問題が残っていると同じ結果になる |
| 辞める前より上の等級・役職で戻れることがある | 勤続年数の扱い次第で退職金・有給が不利になる |
失敗の共通点
辞めた理由が解決していないまま戻ること。これに尽きる。
| 辞めた理由 | 確認すること |
|---|---|
| 人間関係 | その人がまだいるか。同じ部署か |
| 労働時間 | 36協定の内容と実際の残業時間(36協定と残業の上限の記事) |
| 評価 | 評価制度が変わったか。基準が公開されているか |
| 給与 | 賃金テーブルが変わったか |
| 体制・方針 | 組織図と決裁の流れが変わったか |
会社は数年では大きく変わらない。変わったのが自分だけなら、同じことが起きる。「もう大丈夫だと思う」で戻るのが、一番多い失敗だ。
声をかけられた時に確認する5つ
| # | 確認すること | 聞き方 |
|---|---|---|
| 1 | 雇用形態と役職・等級 | 「前回と同じ等級でしょうか。外での経験はどう評価されますか」 |
| 2 | 給与 | 「前回の退職時の額が基準でしょうか、現在の市場相場でしょうか」 |
| 3 | 配属先と上司 | 「どの部署で、どなたの下に入りますか」 |
| 4 | 辞めた理由になった事柄の現状 | 「当時◯◯が理由で辞めました。今はどうなっていますか」 |
| 5 | 退職金と勤続年数の通算 | 「再入社の場合、勤続年数は通算されますか」 |
5は見落とされやすい。通算されなければ、退職金の算定も、年次有給休暇の付与日数も一からになる。有給は入社から6ヶ月経たないと付かないので、入社直後に休みが取りにくくなる(有休の付与日数の早見表の記事、退職金の相場と勤続10年の記事)。就業規則の再雇用に関する条項を確認する。
この5つを、口頭でなく書面(労働条件通知書)で受け取る(労働条件通知書の見方の記事)。
条件交渉の材料
出戻りは「事情が分かっているから安くていいだろう」という交渉になりやすい。持っていくのは3つ。
- 他社のオファーか、現職の年収(数字で)
- 外で身につけたもの(使えるツール、担当した規模、任された範囲)
- 入社後すぐに出せる成果(立ち上がりの早さは、こちらの提供価値だ)
年収の相場は職種と年代で大きく違う(職種別・年代別の平均年収のデータ記事)。
自分から声をかける場合
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1 | 在籍時の上司か人事に個別に連絡する(募集がなくても聞ける) |
| 2 | 戻りたい理由を、辞めた理由と接続して説明する(「外で◯◯を身につけたので、当時できなかった◯◯ができる」) |
| 3 | 条件は必ず書面で受け取る |
辞め方が良かったかどうかが、ここで効く。円満に辞めていれば話が早い。
出戻りが向かない場合
- 辞めた理由が会社の仕組みそのもの(賃金テーブル、労働時間、事業の方向)で、変わっていない
- 今より条件が下がるのに、懐かしさだけで戻ろうとしている
- 外での経験がまだ短い(1年未満だと、持ち帰るものが少なく、条件も上がりにくい)
私は転職を4回している。4回目で年収を下げる選択をしたが、あれは懐かしさでなく、リモートと育休という条件を取りにいった結果だった(年収を下げて正解だった転職の記事)。戻るにしても、取りにいくものを1つ決めておく。それがないと、判断の基準が感情だけになる。
戻る前に、外の条件を1つ並べる
戻るかどうかを判断する時、比べる相手が前の会社の記憶しかないと、判断が感情に寄る。外の求人を1つ並べるだけで、条件の話に変わる。
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よくある誤解
「出戻りは格好悪い」。企業側は積極的に受け入れている。アルムナイの窓口を持つ会社もある。
「戻れば元の条件に戻る」。勤続年数が通算されないと、退職金も有給も一からになる。
よくある質問
辞めてから何年までなら戻れますか?
決まりはない。ただ、3年を超えると社内の顔ぶれと制度が変わっていることが多いので、確認する項目は増える。
前と同じ部署に戻れますか?
会社の都合による。人間関係が辞めた理由なら、配属先を条件として交渉する。
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