求人票に「産休・育休取得実績あり」と書いてある。だが、本当に取れるのかどうかは、この一文からは分からない。
分からなくて当然だ。育児休業は法律の制度なので、どの会社も「あります」と書ける。差がつくのは制度の有無ではなく、実際に何人が取って、どう復帰したかになる。確認する方法を書く。
私は4社目で制度を重視して会社を選び、男性で1年の育休を取った。そのとき効いたのは制度そのものではなく、社内に前例があったことだった。
この記事の要点
- 制度は法律で決まっている。差が出るのは取得の実績と復帰後の扱いだ
- 一定規模以上の企業は取得状況の公表義務がある
- 男性の取得率と平均取得日数が、運用の実態を映す
- 前例のない部署で最初の1人になる負荷は、想像より大きい
なぜ制度の有無では判断できないのか
まず前提を整理する。
育児休業は、育児・介護休業法に基づく制度だ。要件を満たす労働者は取得できる。つまり制度の存在自体は、その会社の姿勢を示すものではない。
差が出るのは3つの場所になる。
- 実際に取得している人がいるか
- 取得した人が、どういう形で復帰しているか
- 復帰後に、元の仕事に戻れているか
特に3つ目が抜けやすい。取得実績はあっても、復帰後に業務が変わる、評価が止まる、実質的に居づらくなる、という形は存在する。
だから確認するのは、制度ではなく実績と、その後だ。
確認する3つの数字
面接や説明会で聞く項目を絞る。
数字1、直近1〜3年の取得人数
「直近で何人が取得しましたか」と聞く。
- 実績が複数ある → 前例がある。手続きも運用も回っている
- 実績が1〜2人 → 制度としては動くが、部署によって差がある可能性
- 実績がない → 最初の1人になる。負荷が高い
最初の1人になること自体が悪いのではない。ただし手続きの整備から自分でやることになるため、そこを覚悟して選ぶかどうかの判断になる。
数字2、男性の取得率と平均取得日数
ここが最も実態を映す。
女性の取得率が高いのは、多くの企業で当然になっている。一方で男性の取得は、職場の理解と業務の引き継ぎ体制がないと成立しない。
だから見るのは2つ。取得率と、平均の取得日数。
- 取得率が高くても、平均が数日なら、形だけの取得である可能性がある
- 取得率が中程度でも、平均が数ヶ月なら、実質的に運用されている
日数まで聞くのが要点になる。率だけでは判断できない。
数字3、復帰後の継続率と働き方
「育休から復帰した方は、その後どのくらい在籍していますか」
復帰してすぐ辞める人が多いなら、復帰後の環境に問題がある可能性がある。
あわせて、時短勤務やリモートの併用ができるかも聞く。復帰しても働き方が元のままなら、続かない場面が出てくる。
公開されている情報の探し方
面接の前に、調べられる範囲がある。
一定規模以上の企業は、育児休業の取得状況などを公表する義務がある。厚生労働省のデータベースや、企業の採用ページ、サステナビリティ報告書で確認できる場合が多い。
公表している企業は、数字に一定の自信があるとも読める。逆に、規模が大きいのに見つからない場合は、面接で直接聞く材料になる。
中小企業は公表義務の対象外である場合が多いため、面接で聞くのが最も確実になる。企業の実態を調べる他の方法は離職率の調べ方にまとめた。
聞き方。遠慮すると判断材料が減る
「育休のことを聞くと、選考で不利になるのではないか」という不安は、よく聞く。
結論を書くと、聞き方を選べば問題にならない。そして聞かずに入って合わなかった場合の損失の方が、はるかに大きい。
聞き方の例を置いておく。
- 「長く働きたいと考えているので、育休を取得された方の実際の働き方を伺えますか」
- 「復帰後に時短やリモートを併用されている方はいらっしゃいますか」
長く働きたいという前置きを付けると、質問の意図が伝わる。そして、この質問を嫌がる会社は、入ってからも同じ扱いになる。その反応自体が、判断材料として最も価値がある。
聞きにくい場合は、間に人を入れる手もある。
*クリックすると公式サイトが開く。登録後に担当から連絡が来て、制度の運用実態から相談できる。*
登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当から連絡が入り、面談の日程を決める → ③ 育休の実績や復帰後の働き方を確認した上で応募できる
女性のキャリアを主に扱う窓口なら、この領域の情報を持っている場合がある。
*クリックすると公式サイトが開く。女性向けの転職支援で、無料で面談できる。*
登録後の流れ|① Web入力で登録(数分) → ② 担当と面談し、希望する働き方を伝える → ③ 条件に合う求人の紹介を受けられる
男性が取る場合。確認する項目が1つ増える
私自身が取った立場から書く。
男性の育休では、業務の引き継ぎ体制が最大の論点になる。制度上は取得できても、業務が属人化している状態では、実質的に抜けられない。
だから聞くべき項目が1つ増える。
- 「長期で休む方が出た場合、業務はどう引き継がれていますか」
この質問の答えが具体的なら、その会社は人が抜ける前提で回っている。逆に「その都度対応している」という答えなら、属人化している可能性がある。
そしてこれは、育休に限らず効く質問だ。病気でも介護でも、人が長期で抜ける場面は必ず来る。そのとき回る会社かどうかを、育休の話から測ることができる。
時期の話。入社してすぐは取れるのか
制度上、労使協定によって、入社1年未満の労働者を対象外とできる定めがある。だから転職の直後に取得できるかは、会社の定めによって変わる。
転職と出産の時期が近い場合、この点は必ず確認してほしい。タイミングの考え方はワーママの転職のタイミングに分けて書いた。
確認しないまま入って、後から対象外だと分かるのが最も避けたい形になる。
あわせて検索される疑問に、先に答えておく
面接で妊娠の予定を聞かれたら、どう答えればいいですか
採用の場面で、性別や結婚・出産の予定を理由に判断することは適切ではないとされている。だからそもそも聞くべきでない質問になる。とはいえ実際に聞かれた場合、答えたくなければ「長く働きたいと考えています」と意図を返す形で足りる。そして、その質問が出たこと自体を、会社を判断する材料にしていい。聞く会社は、入社後の扱いも同じ発想である可能性がある。
取得実績がない会社は避けるべきですか
一律に避ける必要はない。設立から日が浅い企業や、社員数が少ない企業では、単に該当者がまだいない場合がある。その場合は「実績がない」ではなく「これから最初の1人になる」という状態になる。判断は、制度を整える意思があるかどうかで見る。「前例がないので、必要になったら一緒に整えます」と言う会社と、質問を流す会社では、まったく違う。
復帰後に元のポジションに戻れないことはありますか
法律上、育児休業を理由とした不利益な取扱いは禁止されている。ただし実務では、組織の変更や業務の再編で、まったく同じ役割に戻れない場面はありうる。問題なのは、それが育休を理由とした扱いなのか、組織上の理由なのかの区別になる。だから復帰後の配置について、休む前に上司と書面や記録の残る形で話しておくと、後の認識のずれを減らせるわ。
よくある質問
産休・育休の取得実績はどこで調べられますか?
一定規模以上の企業は公表義務がある。厚労省のデータベースや採用ページで確認できる。中小企業は面接で聞くのが確実になる。
制度があるのに取れない、ということはありますか?
ある。差が出るのは取得の実績と復帰後の扱いだ。配属先に前例がない場合、最初の1人になる負荷は大きい。
男性の育休取得率は何を意味しますか?
制度が運用できているかの指標になる。ただし率だけでなく平均取得日数まで見る。数日だけの取得が大半なら形だけの可能性がある。
制度の確認項目をLINEで無料配布中
面接で聞く質問と、公表データの探し方をまとめた資料を、公式LINEで無料配布している。制度の有無ではなく、前例の数を見ることだわ。

