深夜の授乳のあと、スマホで求人を眺めている。このまま今の会社に戻れる気がしない。でも、育休中に転職活動なんてしていいのか。罪悪感と不安で、指が止まる。

正面から答える。できる。違法ではない。ただし、制度の線引きと、順番と、作法がある。きれいごとも脅しも抜きで、全部書く。

*筆者の立場|私は男性で1年の育休を取り、復帰後に退職して独立した当事者だ。育休中に将来を考え続けた経験と、DMに届く相談に基づいて書いている。*

この記事の要点

  • 転職活動自体は違法ではない。情報収集も選考も自由だ
  • ただし育休と給付金は復帰前提の制度。この線引きは正確に知っておく
  • 現実解は、育休中は受け身の準備まで、決断は復帰の前後で
  • 義理の感情は整理できる。判断は感情ではなく比較でやる

まず法律の整理。何が自由で、何が前提か

最初に、事実の線引きをはっきりさせる。

転職活動は自由だ。育休中に求人を見ること、経歴を登録すること、面接を受けることを禁じる法律はない。会社の就業規則が私生活の活動を縛ることも基本的にできない。

一方で、育休は復帰を前提とした制度だ。育児休業給付金も、職場復帰の意思を前提に支給される。だから整理はこうなる。

  • 取得時点から復帰する気が一切ないのに育休を取る——制度の趣旨に反する。これはやってはいけない側だ
  • 復帰のつもりで取得したが、育休中に事情や考えが変わった——人生では普通に起きることで、制度はそれを想定している。この場合に、それまで受給した給付金の返還を求められるのが通常ではない。ただし退職が決まればその後の給付は止まる

つまり、あなたが復帰を前提に育休に入ったなら、いま転職を考え始めたこと自体に、法的な後ろめたさは要らない。個別の給付の扱いで不安があれば、ハローワークに匿名で確認できる。

感情の整理。義理と実利を分けて考える

法律より重いのが、罪悪感の方だと思う。「復帰前提で休ませてもらったのに」「代替要員を入れてくれたのに」。この感情は、あなたがまともな人間である証拠だ。その上で、整理の視点を2つ置く。

視点1、最悪なのは転職ではなく、中途半端な復帰だ。義理のためだけに復帰して、両立が成立せず数ヶ月で辞める。これが会社にとって一番コストが大きい筋になる。受け入れ準備・引き継ぎ・再度の採用。続けられない復帰は、義理を果たしたことにならない。

視点2、復帰して返す道もある。義理が重いなら、一度復帰して一定期間働いてから動く選択もある。復帰後の在籍で気持ちの借りを返し、生活のリズムが見えた状態で転職市場に出る。この道の組み方はワーママの転職タイミングに書いた。

どちらを選んでもいい。大事なのは、義理の感情で思考停止せず、復帰して返すものと移って得るものを比較して決めることだ。

現実論。育休中の活動は「受け身の準備」までが効率的だ

では実務の話をする。育休中の転職活動には、物理的な制約が2つある。面接の時間が作りにくいことと、入社日を保育の確保と連動させる必要があることだ。

この制約を踏まえると、育休中の最適な動き方は、攻めの応募ではなく受け身の準備になる。

  1. 職務経歴書を完成させる。育休中は、キャリアの棚卸しに使える数少ないまとまった思考時間でもある。復帰するにしても、この棚卸しは無駄にならない
  2. 経歴と希望条件を登録して、市場の反応を見る。スカウトの量と質で、いまの自分の市場価値と、両立可能な求人の存在が分かる。動くかどうかを決める材料が、動かずに手に入る
  3. 保育の確保と入社時期の関係を整理する。内定が出ても保育が決まらなければ動けない。入所スケジュールとの逆算は保育園の求職期限の記事の考え方が使える(在職中は認定事由が就労・育休なので有利だ)

受け身の経路はこれで作れる。

*クリックすると公式サイトが開く。経歴を登録すると、企業やエージェントからのスカウトが届く。*

登録後の流れ|① 経歴と希望条件(勤務時間・在宅可否)を入力する → ② 条件に合う求人からスカウトが届く → ③ 動くと決めた時だけ返信すればいい

マイナビスカウティングで市場の反応だけ見ておく

登録しても、応募の義務はない。復帰か転職かを決める前に、決めるための情報を集める。これが育休中の活動の正しい位置づけだ。在宅で働ける職場に絞って探したい人は在宅で働けるワーママ転職も合わせて読んでほしい。

タイミングの比較。育休中・復帰直後・復帰半年後

動くタイミングの選択肢を、正直に比較する。

育休中に決めて、復帰せず移る。両立不能が確定している場合の最短路だが、面接調整と保育の連動が難しく、給付金は退職決定でその後は止まる。前の会社への感情的な負債も一番残る形になる。

復帰して、すぐ動く。復帰の義理は形として果たしつつ、市場では在職中の候補者として動ける。ただし復帰直後は生活の立ち上げで消耗のピークでもある。活動の体力が残るかが論点だ。

復帰して、半年〜1年働いてから動く。両立の実態(何が無理で何が要るか)が分かった状態で会社を選べるから、次の会社選びの精度が一番高い。時短や子の看護の実績も、次の面接で体制の説明として使える。急がないならこれが本命になる。

どれが正解かは、いまの会社の両立環境の絶望度で決まる。育休明けに席がないような扱いを受けているなら最初の道が現実になるし、環境がまともなら3つ目が堅い。

深夜の求人検索は、逃避ではなく準備の始まりだ

最後に、冒頭のあなたに戻る。

深夜に求人を眺めてしまうのは、意志が弱いからではない。いまの働き方のまま復帰する未来に、体が警報を出しているからだ。その警報は、無視するものではなく、材料として使うものになる。

育休は、子と過ごす時間であると同時に、キャリアを外から眺められる稀有な期間でもある。私はこの期間に考えたことが、その後の独立につながった。焦って決める必要はない。棚卸しと受け皿だけ作って、決断は情報が揃ってからでいい。深夜の検索を、罪悪感の時間から準備の時間に変えてほしいんよ。

あわせて検索される疑問に、先に答えておく

育休中の面接で、育休中であることは正直に言うべきか

隠さない方がいい。入社時期の調整に直結する情報で、隠したまま進めると内定後に必ず表面化する。伝え方は「現在育児休業中で、◯月以降に入社可能です。保育の確保は△の状況です」と、時期と条件をセットで事実として言う。育休中の転職活動をどう評価するかは会社の文化次第で、そこで渋い顔をする会社は、入社後の両立にも渋い会社だと判定材料にすればいい。

保育園はどうやって確保するのか。転職が先か保育が先か

多くの自治体で、内定(就労予定)があれば就労予定として入所申し込みができる。一方、保育が決まらないと入社日が確定できない。この鶏と卵は、入社時期に幅を持たせた内定で解く。面接の段階から「入社は◯月〜△月の間で、保育の確保次第で確定させたい」と伝え、応じてくれる会社を選ぶ。ここで柔軟な会社は、入社後の急な休みにも柔軟なことが多い。

復帰せず転職すると、会社に育休の費用を返せと言われないか

育児休業給付金は雇用保険から出ており、会社が払ったものではないから、会社への返還という話は基本的に成り立たない。会社独自の上乗せ手当(育休中の給与補填など)を就業規則で返還条件付きにしている場合だけ、その規定の確認が要る。「育休を取ったなら復帰の義務がある」という法律上の縛りはないが、感情面の整理は本文に書いた通り、比較で決めてほしい。

よくある質問

育休中に転職活動をするのは違法ですか?

違法ではない。活動は自由だ。ただし育休と給付金は復帰前提の制度で、最初から復帰の意思なく取得するのは趣旨に反する。この線引きだけ正確に。

育休中に内定が出たら、給付金は返さないといけませんか?

取得時に復帰の意思があったなら、考えが変わっての転職で受給済み分の返還を求められるのが通常ではない。退職決定後の給付は止まる。個別の扱いはハローワークで確認を。

育休中の転職はやはり非常識だと思われますか?

反発を持つ人はいる。だが続けられない復帰の方が双方の損失は大きい。非常識かどうかではなく、復帰して返すものと移って得るものの比較で決める問題だ。

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