ジョブ型雇用に移行する、というニュースを見た。自分の働き方が何か変わるのか、それとも大企業だけの話なのか分からない。
先に整理しておくと、これは制度の名前の話ではなく、何に対して給料が払われるかの話だ。変わるのは年功と異動の扱いになる。会社員のキャリアに何が起きるのかを書く。
この記事の要点
- 先に決まるものが違う。人が先か、職務が先か
- 報酬が年功ではなく職務の市場価値で決まる方向に動く
- 異動で職種が変わる前提が薄れる。配属の運は減る
- 備えは1つ。自分の職務を言語化できる状態にしておく
2つの型。先に決まるものが違う
まず違いを整理する。
メンバーシップ型雇用は、人を採用してから仕事を割り当てる形になる。新卒で入社して、配属されて、数年で異動して、また別の仕事をする。職務が先に決まっていないから、異動と配置転換が前提になる。
ジョブ型雇用は、職務の内容を先に定義して、それに合う人を採用する形だ。職務記述書(ジョブディスクリプション)に、担当する業務と求める要件が書かれる。その職務に対して報酬が設定される。
この違いから、他の全部が派生する。
| メンバーシップ型 | ジョブ型 | |
|---|---|---|
| 先に決まるもの | 人 | 職務 |
| 報酬の決まり方 | 年功・等級 | 職務の市場価値 |
| 異動 | 前提になる | 原則として職務の範囲内 |
| 求められる力 | 幅広い適応力 | 職務に対する専門性 |
何が変わるのか。3つある
制度の説明ではなく、働く側に何が起きるかを書く。
1、年功で自動的に上がる形が薄れる
メンバーシップ型では、在籍年数と等級で報酬が上がる部分があった。ジョブ型では、担当する職務が変わらない限り、報酬の水準も大きくは動かない。
上げたければ、より上位の職務に移る必要が出てくる。社内での昇進か、転職か。どちらにしても職務を基準に動くことになる。
市場価値が希少性で決まる仕組みは市場価値は希少性で上がるに書いた。ジョブ型は、この原則が社内にも入ってくる形になる。
2、配属の運が減り、責任の範囲が明確になる
「配属ガチャ」と呼ばれる状態は、職務が先に決まっていないから起きる。ジョブ型では何をやるかが先に決まっているため、この不確実性が減る。
ただし裏返しもある。職務の範囲が明確になると、「それは自分の仕事ではない」が成立する一方で、その職務で成果が出ないことの説明もつかなくなる。曖昧さが減ると、逃げ場も減る。
3、転職市場との距離が近くなる
職務単位で報酬が決まるということは、社内の評価と市場の評価が同じ軸に乗るということだ。
だから「この会社でしか通用しない経験」が減り、同じ職務で他社に移る動きが自然になる。キャリア採用の枠が広がるのは、この流れと繋がっている。
応募経路そのものの整理は転職の応募経路は6種類あるに書いた。
実態。完全移行ではなく部分導入が大半だ
不安を煽る記事が多いので、実態も書いておく。
日本企業の多くは、完全なジョブ型への移行ではなく、部分的な導入にとどまっている。管理職層だけに適用する、一部の専門職から始める、報酬制度の一部だけを職務基準にする。こうした形が現実的なところになる。
理由は単純で、新卒一括採用と異動を前提にした仕組みを、一度に組み替えるのは難しいからだ。
だから極端な変化として身構える必要はない。ただし方向としては、年功の比重が下がり、職務と成果の比重が上がる方に動いている。この方向は変わりにくい。
備え。自分の職務を言語化する
やることは1つでいい。自分の仕事を、職務記述書の粒度で書けるようにする。
- 弱い書き方——「営業をやっています」
- 強い書き方——「中堅製造業向けに、業務システムの新規開拓営業。年間◯件の商談を担当し、受注額◯万円に責任を持つ」
違いは、担当する市場・顧客・商品・責任を持つ数字が書かれているかどうかになる。
この粒度で書けると、社内の評価でも転職市場でも通用する。そしてこれが書けると、キャリアパスやキャリアプランといった曖昧な言葉も、実際の職務の積み上げとして考えられるようになる。書けない部分があるなら、それが言語化できていない領域だ。
自分の職務が市場でどう評価されるかは、測ってみるのが早い。
*クリックすると公式サイトが開く。質問に答えると想定年収と、経歴を求める企業からのスカウトが見られる。*
登録後の流れ|① 質問に答えて経歴を登録する(10分弱) → ② 想定年収が表示される → ③ 経歴に興味を持った企業からスカウトが届く
測り方の全体像は市場価値の測り方にまとめた。
幅広くやってきた人はどうなるか
「専門性がない」と感じている人向けにも書いておく。
幅広い業務をこなしてきたこと自体は、弱みではない。問題は、それが言語化されていないことの方になる。
- 複数の部署を経験している → 部門をまたぐ調整ができるという職務になる
- いろいろな業務を任されてきた → 立ち上げや引き継ぎができるという職務になる
- 特定の資格や技術がない → 業務の全体像を把握しているという職務になる
幅は幅で、1つの専門性だ。ただし「いろいろやってきました」では伝わらない。どの場面で、何を解いたかに変換する作業が要る。
自分では変換しにくいなら、第三者に見せるのが速い。
*クリックすると公式サイトが開く。登録後に担当から連絡が来て、経歴の書き方から相談できる。*
登録後の流れ|① Web入力で登録(数分。職務経歴書は未完成でいい) → ② 担当から連絡が入り、面談の日程を決める → ③ 経験の書き方から相談できる
あわせて検索される疑問に、先に答えておく
ジョブ型になると、簡単に解雇されるようになりますか
日本の労働法制では、職務がなくなったことだけを理由に直ちに解雇できるわけではない。ジョブ型を導入した企業でも、解雇のルールが変わるわけではないのが原則になる。ただし、担当する職務が縮小したときに、社内で別の職務に移る前提が薄くなる可能性はある。メンバーシップ型では異動で吸収されていた部分が、そうではなくなる場面はありうる。だから備えは、解雇への不安ではなく、職務の言語化と市場価値の把握の方に置く。
若手にとってジョブ型は不利ですか
経験を積む機会という点では、幅広く任されるメンバーシップ型の方が有利な面がある。一方で、専門性を早く固めたい若手にとっては、職務が明確な方が積み上がりが速い。どちらが有利かは、自分がどちらの型のキャリアを望むかで変わる。焦って専門を決める必要はないが、3年働いたら「自分の職務は何か」を一度書いてみる価値はある。書けない状態が5年続くのは、型に関係なく不利になる。
転職しないなら、この話は関係ないですか
関係する。社内の評価軸が職務基準に動けば、同じ会社にいても、職務の言語化ができる人とできない人で差が出る。上位の職務に手を挙げるにも、自分が今何をやっているかを説明できる必要がある。転職しないと決めている人ほど、社内での職務の見え方を意識した方がいい。キャリアは、動くかどうかではなく、説明できるかどうかで決まる場面が増えていくわ。
よくある質問
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用は何が違いますか?
先に決まるものが違う。人が先か職務が先か。そこから報酬の決まり方と異動の前提が変わる。
ジョブ型になると会社員にとって不利ですか?
一律ではない。専門性が明確な人には有利に働く。ただし日本企業の多くは部分導入にとどまっている。
ジョブ型に備えて、今から何をすればいいですか?
自分の職務を言語化する。市場・顧客・商品・責任を持つ数字の粒度で書けるようにしておく。
職務の言語化シートをLINEで無料配布中
自分の仕事を職務記述書の形に書き直すシートを、公式LINEで無料配布している。制度がどうなっても、言語化できる人は強いんよ。


