学び直したい。でも仕事を辞めると収入が止まる。会社に籍を置いたまま数ヶ月だけ学ぶ方法はないのか。そう思っていた人向けの制度が、2025年10月にできた。
辞めずに学ぶ人に、失業保険と同じ額が出る。辞めずに学ぶ人に、失業保険と同じ額が出る制度ができた。要件と、額と、教育訓練給付との併用と、辞めて学ぶ場合との比較を書く。
先に一文で。教育訓練休暇給付金は、在職のまま無給の教育訓練休暇を取った人に基本手当と同額を90〜150日(被保険者期間5年以上10年未満90日・10年以上20年未満120日・20年以上150日)支給する制度で、要件は被保険者期間5年以上と無給の休暇、額は月給30万の35歳なら日額約6,000円、教育訓練給付との併用ができ、会社に制度がなければ就業規則への追加が要る。
この記事の要点
- 在職のまま無給の教育訓練休暇 → 基本手当と同額が出る(2025年10月〜)
- 日数|被保険者期間5〜10年で90日、10〜20年で120日、20年以上で150日
- 額|賃金日額の50〜80%。上限は30〜44歳で8,270円
- 会社に教育訓練休暇の制度が要る。有給の休暇では出ない
制度の全体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 雇用保険の被保険者で、教育訓練のための無給の休暇を取る人 |
| 被保険者期間 | 5年以上 |
| 給付日数 | 5年以上10年未満90日/10年以上20年未満120日/20年以上150日 |
| 額 | 基本手当と同じ(賃金日額の50〜80%) |
| 上限(日額) | 29歳以下7,450円/30〜44歳8,270円/45〜59歳9,110円/60〜64歳7,830円 |
| 手続き | ハローワークに休暇開始の届出。休暇の証明は会社が出す |
| 注意 | 有給の休暇・賃金が出る休暇は対象外。会社に制度がないと取れない |
日額の計算と上限の表は失業保険の日額早見表の記事と同じ考え方で出せる。
月給別の額の目安
| 月給 | 日額の目安 | 90日 | 120日 | 150日 |
|---|---|---|---|---|
| 25万円 | 約5,400円 | 48.6万円 | 64.8万円 | 81.0万円 |
| 30万円 | 約6,000円 | 54.0万円 | 72.0万円 | 90.0万円 |
| 40万円 | 約7,300円 | 65.7万円 | 87.6万円 | 109.5万円 |
| 50万円 | 8,270円(上限・30〜44歳) | 74.4万円 | 99.2万円 | 124.1万円 |
給付は非課税。ただし休暇中も社会保険料(健康保険・厚生年金の本人負担分)は払うので、月給30万なら月約4.2万円が出ていく。住民税も前年分が続く(休職中の給与と手当の記事と同じ形になる)。
教育訓練給付との併用
| 制度 | 何が出るか |
|---|---|
| 教育訓練休暇給付金 | 生活費(基本手当と同額、90〜150日) |
| 一般教育訓練給付 | 受講料の20%(上限10万円) |
| 特定一般教育訓練給付 | 受講料の40%(上限20万円)+資格取得と就職で+10% |
| 専門実践教育訓練給付 | 受講料の50%+修了・就職で+20%、賃金上昇で+10%(最大80%、年上限64万円) |
併用できる。専門実践の講座(看護・介護・保育の資格、情報処理、大学院など)を受けながら、生活費の給付を受ける形になる。講座の探し方と申請は教育訓練給付金の記事、給付を受けた後の転職は教育訓練給付を受けてすぐ転職する時の記事で書いた。
辞めて学ぶ場合との比較
| 在職+無給の教育訓練休暇 | 自己都合で辞めて学ぶ | |
|---|---|---|
| 生活費 | 教育訓練休暇給付金 90〜150日 | 基本手当(給付制限1ヶ月の後)90〜150日+条件により教育訓練支援給付金 |
| 健康保険・年金 | 会社の健保・厚生年金が続く(本人負担分は払う) | 国保・国民年金に切り替え |
| 戻る場所 | ある | ない |
| 履歴 | 離職の履歴が残らない | 離職の履歴が残る |
| 向く期間 | 1〜6ヶ月 | 1年以上、資格の学校に通う場合 |
戻る場所を残したまま数ヶ月学べるのが、この制度の要点だ。会社都合と自己都合の違いは会社都合と自己都合の違いの記事で書いた。
会社に制度がない時
教育訓練休暇は会社の制度(就業規則)として置く必要がある。ない会社では、次の順で動く。
- 人事に教育訓練休暇の制度があるかを聞く(2025年10月の新設に合わせて作った会社が増えている)
- なければ、就業規則に追加してもらう提案をする。会社の費用負担はゼロ(給付は雇用保険から出る)で、人材育成の助成金(人材開発支援助成金の教育訓練休暇等付与コース)の対象になる点を添える
- それでも難しければ、休職制度・自己啓発休暇・時短勤務・有給の組み合わせで学ぶ時間を作る
- 学ぶ内容が転職に直結するなら、在職のまま夜間・休日の講座で教育訓練給付だけ使う
会社にとって費用が出ないことを先に言うと、話が進みやすい。
使いどころ
- 職種を変える転職の前に、3ヶ月〜半年の講座で実務のレベルまで持っていく(職種別・年代別の平均年収のデータ記事で、移る先の40代の年収を見てから決める)
- 資格職(看護・介護・保育・電気工事)に移るための学校に通う
- 独立の前に、稼ぐ力の元になるスキルを固める(独立前に会社員のうちにやることの記事)
私は1社目のブラック企業を辞めた後、フリーターをしながら50万円払って渋谷のWebスクールに通い、Web業界に未経験で入った。当時この制度があれば、辞めずに学ぶ選択肢があった。無収入で学ぶ期間の重さは、その後の判断を狂わせる。生活費が出るかどうかで、学ぶ内容を選べる幅が変わる。
よくある誤解
「有給休暇で学べば給料も出て給付ももらえる」。有給や賃金が出る休暇は対象外。無給の休暇でないと給付は出ない。
「誰でも使える」。被保険者期間5年以上と、会社に教育訓練休暇の制度があることが条件だ。
失業保険が出ない人の訓練+月10万
求職者支援制度は、基本手当を受けられない人が無料の職業訓練を受けながら月10万円+通所手当を受け取れる制度。雇用保険に入っていなかった人、加入期間が足りない人、受け終わった人、フリーランスを廃業した人が対象で、本人収入 月8万円以下・世帯収入 月30万円以下・資産300万円以下・全訓練日の出席が要件。詳しくは求職者支援制度の記事で書いた。
学び直しの実態(公的データ)
令和7年度能力開発基本調査で、自己啓発をした人は35.5%(正社員43.3%・非正規15.9%)、30代42.8%・50代31.0%と年齢で下がり、企業規模30〜49人27.5%と1,000人以上52.3%で差がある。できない理由は仕事が忙しい58.5%・費用26.2%で、会社が出す教育費は1人年2.0万円。数字の全体は学び直しをしている人は35.5%のデータ記事で書いた。
よくある質問
休暇中に転職活動をしてもいいですか?
制度の趣旨は在職のまま学ぶことなので、休暇中の転職活動は想定されていない。学び終えてから動く。辞める前提なら、退職して基本手当を受ける形のほうが筋が通る。
休暇の後に辞めたら給付を返すことになりますか?
返還の規定は制度の詳細で定められる部分だが、給付は休暇の期間中の生活費として支給されるもので、休暇を実際に取り教育訓練を受けていれば返還は原則ない。手続き前にハローワークで確認する。
転職とスキルアップの資料をLINEで無料配布中
教育訓練休暇給付金の要件チェックと、月給から給付額を出す計算欄、会社に制度を提案する時の説明メモを公式LINEで無料配布している。辞めずに学ぶ道が、選択肢に増えた。


