有給が20日残っている。退職するなら全部使いたい。だが、どのタイミングで、どういう顔をして言えばいいのか。「全部使います」は、さすがに図々しいと思われないか。

先に答えを言う。言うタイミングは、退職を切り出すその場。退職日とセットで、計画として出す。図々しさの問題は、言い方の順番でほぼ消せる。型ごと書く。

この記事の要点

  • 切り出しの場で、退職日・最終出社日・消化期間を1つの計画として出す
  • 後出しは削られる。引き継ぎ計画が消化なしで組まれてしまうからだ
  • 事前準備は残日数の確認。明細か勤怠システムで数字を持って臨む
  • 引き継ぎの完了計画を先に見せると、消化を責める材料が消える

準備。残日数を数字で持って臨む

切り出す前にやることは1つだけ、残日数の確認だ。給与明細か勤怠システムに記載がある。分からなければ人事に「有給の残日数を確認したい」と聞いていい。この確認だけで退職を察されることはまずない。

残日数が分かったら、逆算する。退職日から残日数分さかのぼった日が、最終出社日の目安だ。土日を挟む数え方や端数の扱いは退職日から逆算する有給消化の計算で書いた。この計算を済ませてから臨むと、その場で日付を即答できて、話が一度で決まる。

言い方の型。計画として一度に出す

退職を切り出す場(アポの取り方と時間帯は退職を伝える時間帯の正解が担当だ)で、こう言う。

「◯月末日で退職させていただきたく、ご報告に参りました。引き継ぎは◯月◯日までに、資料の作成含めて完了させます。その翌日から退職日までは、残っている有給の消化に充てさせてください。最終出社日は◯日になります」

この型の強さは、順番にある。退職日→引き継ぎの完了計画→消化、の順で言うことで、消化が「サボりの要求」でなく「完了後の消化」として聞こえる。引き継ぎへの誠意を先に置いたぶん、有給の話を責める材料が相手に残らない。

言ってはいけないのは逆の順番だ。「有給を全部使いたいんですが…」から入ると、権利の主張が先に立って、上司の頭の中で対立の構図ができあがる。同じ内容でも、順番で温度が変わる。

渋られた時の返し。3段で用意しておく

段1、「引き継ぎが終わらないだろう」と言われたら。

「終わらせる計画でこの日程を組んでいます。資料は◯日までに作成し、後任の方への説明も最終出社日までに行います。仮に不明点が出た場合は、消化中もチャットで補足します」

計画と補足の窓で返す。それでも出社を求められた場合の断り方は消化中に出社を求められた時で書いた。

段2、「全部は認められない」と言われたら。

「有給は退職日までに消化しないと消えてしまうので、使わせていただきたいです。日程の組み方でご心配があれば、最終出社日の調整はご相談できます」

削るのではなく、配置の調整に話を移す。数日を出社に振り替えて、その分の買い取りや退職日の後ろ倒しを引き出す交渉も選択肢だ(買い取りの可否は有給買い取りの違法と例外にある)。

段3、それでも拒否されたら。もう言い方の問題ではなく、権利侵害の問題に変わっている。有給を取らせてくれない会社への対処に進んでほしい。申請の記録を残す段階だ。

円満さは、消化中の振る舞いで完成する

言い方で作った円満さは、消化中の小さな配慮で完成する。コストの低い順に3つ置く。

  • 緊急連絡の窓を1つ開けておく。「資料の不明点はチャットでどうぞ」の一言で、職場の安心感がまるで違う
  • 挨拶を最終出社日に済ませる。消化に入ってから挨拶のために出社する必要はない。最終出社日に一周しておく
  • 貸与物と私物を最終出社日に整理する。消化中に「取りに来て」を発生させない(発生してしまった時の対処は私物・給料の呼び出し問題と同じ考え方でいい)

どれも数分の手間で、「最後まできちんとしていた人」の記憶を残せる。有給は全部使う。振る舞いは丁寧にやる。この2つは両立するんよ。

よくある誤解

「有給の完全消化は権利だから、言い方に気を使う必要はない」。権利であることは事実だが、退職日の設定・引き継ぎの評価・最後の数週間の空気は、言い方で大きく変わる。権利を通すための技術として、順番に気を使う価値はある。

「退職前の消化を申請すると、賞与や退職金を減らされる」。有給取得を理由にした不利益取り扱いは法律で禁じられている。賞与の支給日と退職日の関係だけは規程の確認が必要なので、ボーナスをもらってから辞める段取りとセットで日程を組むといい。

よくある質問

有給が40日近くあります。2ヶ月近い消化は現実的ですか?

現実的だ。繰越を含めて40日残っている人の長期消化は普通にある。ただし期間が長いほど、退職日の設定と転職先の入社日調整(入社日はいつまで調整できるかで書いた)を早めに組む必要がある。切り出しの時期を、通常より1ヶ月前倒しするのが安全だ。

半端な残日数(3日など)でも、消化を言い出していいですか?

いい。3日でも給料約3日分の価値がある。少ないほど会社側も調整しやすいので、むしろすんなり通る。遠慮して捨てる理由はない。捨てた場合に何を失うかは有給を残して退職する損の大きさで書いた。

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